みんなのおねだり
- すずめや

- 21 分前
- 読了時間: 5分
気づいたら家のなかに動物がたくさんいる。
彼らは基本的に健康でいて毎日ごはんをたべしっぽを降り尻を突き上げ走り回って寝っ転がって平和に暮らしている。
かめきちは京都から夫が連れてきたカメだが冬の間は水槽に水中ヒーターをいれてもらってあたたかくすごしている。東北の冬にカメを冬眠させると凍りついて凍死する恐れがあるらしく、かめきちは冬眠せずにカメ用の日照ライトの下で甲羅を干す。冬眠中のカメはもちろんごはんを食べないがかめきちは冬でもごはんを食べる。
かめきちのおねだりはエサクレダンスで、水槽のはしっこによって顔をこちらに向けて両手でいぬかきのような動きをする。エサクレダンス中にごはんを落とすけど水流でごはんは流れてゆき、かめきちは食いつくのが遅いのでけっこうな数がフィルターに詰まっている。
かめきちはごはんをぼろぼろこぼすのでそれを食べるドジョーズが共存している。
ぬげたは散歩のおねだりとごはんのおねだりとがある。散歩のおねだりのときはほんとうに仔犬のように目をきゅるんとさせて笑って誘う。朝、寝巻きから服に着替え始めると前足を伸ばしてストレッチをはじめ、朝の散歩に期待を膨らませ始める。朝の散歩といってもトイレにちょっと出るくらいで、それがおわると朝ごはんだと知っているので基本的にすばやく家に戻る。
ごはんのおねだりは朝晩のごはんのおねだりではない。それはもらえるのをちゃんとわかっている。我々が食事中に至近距離に来てなにかおこぼれのごはんがもらえないかとおねだりにくるのだ。
座っている人間の膝にぬげたの鼻がつくような近さでこちらをずうっと見ている。もらえそうな気配があるとしっぽを振り始め笑顔になる。もらえそうでもらえないときは急にきりっとしておすわりをしたり悲しそうな顔をしたり夫いわく"とても可愛い顔"をしたりしてつねになにかを欲しがっている。
犬というのはごはんに関して足るを知らないものらしい。食べられるのならばいつでも食べたいのだ。だからはじめの数年でぬげたは太った。夫はぬげたにおやつをやるのが我慢できなくていまだにぬげたはもちもちしている。夫はそれでもおやつをやるのをだいぶ控えられるようになった。ぬげたはすこしだけ去年よりもほっそりした。
猫4匹はごはんのおねだり、めーめは抱っことキスのおねだり、ヤン子とみんみは尻叩きのおねだりと扉を開けてのおねだりをする。モンティーヌはホットカーペットが切れたときとごはんのとき以外は自分の部屋でもっちりしている。
みんみは尻叩きとごはんのおねだりがずいぶん激しい。特に朝は人間の目覚ましアラームが鳴る少し前からゴロゴロいって甘えんぼしてにゃんにゃか鳴いてぶりぶりに擦り寄ってくる。すごく可愛い。みんみがいちばんかわいこぶるのがこの朝だ。寝たふりも通じないのが恐ろしい。
まだ起きたくないからみんみをひっつかんで布団のなかに引きずりこむ。たまにはそのままあったかさに満足して一緒に眠ってくれるけどだいたいはすぐに外に出てまた人間をぶりぶりに起こそうとする。その気配でモンティーヌが遠くの自分の部屋から人間を呼びつける。モンティーヌの声は高いのでよく響く。モンティーヌとみんみの二重奏によってまだ眠たい人間はしぶしぶ起きる。
雪が溶ければ虫やかえるの声でけっこう早起きしているんだけど冬の間は夜も朝も静かなので本当はお寝坊をしたい。だけどできない。
めーめは自分がいちばん愛されていないと気がすまない我儘王様キャットであるため、ぬげたが構われているのを見てぬげたを殴っていたが、近頃は丸くなってぬげたが構われているところに割り込んで抱きしめてもらうようおねだりをするようになった。そうでないときも伸び上がって前足を精いっぱい伸ばしてだっこを要求する。そのときめーめは人間の目を睨みつけ、だっこしないなら許さんぞといわんばかりの強い顔をする。
たいへん悔しい話だがめーめはわたしのだっこより夫にだっこしてもらうほうが好きだ。抱き上げられるとうっとりと目を細めて頬ずりをし顎を甘噛みし両腕を夫の首に巻き付けている。悔しい。わたしにもそうしてほしい。けれど近ごろめーめは夫にばかりだっこをおねだりしている。
ヤン子のおねだりはわりと控えめであるが確固とした存在感を醸し出す。ごはんがほしいときは無視できない、人間の視野に入るところで上品に座り始めたり、人間の先を走り抜けて到達先ですばやく寝転び腹を見せて腹を揉ませようとする。
仔猫のころから大人びていてへんな仔猫だと思っていたけど成長してこの猫はくのいちなんじゃないのかと思うようになった。気づかれないようにこっちを見ていて目が合うと逃げることも多いのに堂々とパンを盗んだり、ダッシュの助走になぜか横跳びをして壁を蹴り加速していくさまを見ているとどうも忍びの血を感じる。
前述したようにモンティーヌは基本的にもっちりしているけれどおねだりの声が高くて可愛い。そしてしつこい。1時間でも鳴き続けている。それ以外のときは黙っているので一日中おねだりのために体力を温存しているのかもしれない。ミュージカルのキャッツでは猫たちは昼間ごろごろしていて月の下で踊り出すために力を温存しているのだというようなくだりがあるけれどモンティーヌはごはんをおねだりするために力を温存し、ごはんを食べて力をつけ、温存し、次のおねだりに備えているのだ。
山のなかのふるいでかいうちのなかで、こんなに平和に暮らしているのがまだ信じられずに夢のようだ。ごはんの皿を持って歩き出すと猫たちはにゃんにゃか言ってこちらを見ながらごはんの場所に走っていく。こんな風景が日に2度も、毎日ある。言葉の通じないどうぶつがこちらを信じきって甘えてくる。
しあわせもんだな、と思う。









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