盛岡のひとびと
- すずめや

- 14 分前
- 読了時間: 3分
昨日おとといと一日中カワトクの店頭に立って岩手移住後最大数の岩手県民もとい盛岡人と話した。
先週の在店ではてんてこ舞いでよく噛み砕けなかったけれど二度目の店頭でなんとなく盛岡のひとびとの感じを掴んだような気がする。
まずは店内、カワトク内だけれど、朗らかだ。
仙台藤崎に行った時もいたく感動したすれ違いざまの気持ちの良い会釈やスタッフさん同士の空気感の軽さが素敵だった。やっぱり東北の百貨店内部はみんなこんなかんじなのだろうか。
そして立ち止まってくださるお客様、皆さまゆったりとした構えでわたしの説明をじっと聞いてくださる。耳を傾けてくれているというのが静かに伝わってくる嬉しさがある。
今回は初めての会場ということもあって、持っていくノートの種類をけっこう限定した。持って行ったなかでも物語のノートのシリーズはぜひ盛岡の人々の反応を見たいと思ってどきどきしていた。いちばん値が張るシリーズだけれど、それは手間と思いの乗った価格の反映であり、だからこそこのシリーズが、どう売れるのかを見たかった。ふだん出ている作家同士の売り場づくりでは、わたしの価格帯は尻から2番目3番目というくらいだけれど今回の文具博ではおそらくわたしの価格帯は1番目か2番目くらいに高いと思う。高級品と眉を顰められても仕方なかった。
しかし実際に店頭に立ってお話をすると、意外なほどに手製本というニッチな工芸についてすんなり飲み込んでくださって、驚いてくださって、フラットな目で作品を見てくださったように思う。
手製本は説明に苦労する。ずっとそうだったのにあんまり苦労せずにわかってもらえた感覚があってこちらもいつもより構えずにお話ができた。
それに面白かったのは物語のノートたちの減り方。マラルメのノートがわたしが席を外したタイミングでじっとりと減っていく。マラルメのことを知っている人が多いのか、たまたまだかわからないけれど、マラルメのことを知っている人は店員の接客など受けずに持っていくのかもしれないとも思う。マラルメのノートは普段ならかなり説明をするタイプの作品だけれど沈黙のうちに不在のうちにいなくなっていくのが不思議だった。
それからよく手に取ってもらったのがダゴンと人間椅子と黒猫だ。ダゴンはいわずもがな暗くて臭い題材だのに、残りが少なかったのもあるけれど、ぜんぶなくなった。人間椅子は真紅に黒文字で見るからにおどろおどろしいし、黒猫は硬い石造りの室内をイメージした、派手さはない装丁で渋めの色味だ。
乙女の柔肌をイメージしたピンクの刺青やきらきらの銀河鉄道の夜、かわいいキャンディーカラーのキャラメルと飴玉、しっとりと大人びた青色を基調にした幸福の王子と、ぱっと目を引くであろう装丁のものはほかにもあったのに暗いのと地味なのが旅立ちやすかった。最高である。わたしは心の中でみなさんと握手をした。催事場全体がキラキラポップでファンシーな雰囲気なのに、そういうところにわざわざお買い物に来たというのに、立ち止まり頭を切り替えてこの地味さの良さをわかってくださる。
まずわたし個人の製作物に目を止めてくださるという時点ですべての方と心のどこかで類友な部分があるのだろうというアドバンテージがあったにせよ、この売れ方は嬉しかった。
なんというか、いいと思ってやってるけど説明に苦労するんだよなあ、トホホ、みたいなやつがぜんぶすんなりわかってもらえた。
追加納品に10キロ近いリュックを背負い盛岡駅からカワトクをよたよた歩き、身体はわりとガタガタになり、昨日の夜もなんだか風邪の悪寒がして嫌な雰囲気だったけれど心の中はずいぶん晴れやかである。いいと思ったものがすんなりいいと受け入れてもらえる嬉しさ、作家冥利の甘いひとつぶ。








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