なみだひとすじ
- すずめや

- 10月2日
- 読了時間: 3分
さて博多にやってきた。
今回は高騰している福岡のホテル事情にびびっていたところ、福岡在住の友人が鳥栖なら電車一本でいけるし宿も安いよと教えてくれて初めての佐賀県に宿泊している。
まわりはスナック、古びた飲食店、でかいイオン的モール、駅のホームには立ち食いうどんとかなり素敵な寂れかたをしていてわたしはこういう町が好きだ。
くたびれ果てた佇まいの古いラーメン屋さんで年老いた店主にやたらとゆっくりの動作でとんこつラーメンを作ってもらった。
ずっとここにあってここにいた人の商いと生活。
都心部の華やかさやスマートさに混じり、背筋を伸ばす気分になって闊歩、というのも悪くはないけれど根本的にそういうのに性根が合わないのだろうと思う。
背を丸くして歩いていても大丈夫なところが落ち着くのだ。
阪急の社員さんには、宿、鳥栖っすか!と驚かれたけどいいのだ。
どきどきすることがあった。
パネル作品に詩をつけているのは、こんなブログまで読みにきてくれている方はご承知おきと思うが、その作品をみて、涙を流した人がいた。
しっかりとお仕事をお勤めなのだろうな、という雰囲気の、それこそ背筋を伸ばして闊歩、というような雰囲気のきりっとした女性が、前のめりに作品を見てくれていた。
それで、この作品には詩がついているんです、とパネルをひっくり返して裏に貼り付けていた詩を見せた。
はじめはわあ、と喜んでくださって、もう一つ気になるのがある、と言ってくださったのでそちらも見せた。
そしたらば作品を見つめていた黒目のきりっとした瞳があっというまにゆるゆるになり、涙でゆらめき、その女性もおそらく、思っても見なかった涙が、溢れてしまった。
わたしも、たぶん彼女も、驚いたと思う。
驚いて、彼女はとりあえず去っていった。
わたしでもそうしたと思う。
ギャラリーや展示室のような空間ならまだしも、百貨店の一階、人通りもあるきらきらの場所で、急に涙が出てしまったら。
タイミングなんだろうとは思う。
ちょうどなにかのヒビか、穴か、はたまた溢れそうだった液体か。
彼女のなにかにちょうど刺さってしまったのだ。
たまたまだったとは思うけれど、それでも、人の心が揺らぐのを、文字通り溢れるのを、そうしようと思ってもみなかったわたしの作品によって、思ってもみなかったタイミングで、目の当たりにした。
どきどきして、そわそわして、そのなかに、疑いようもない、高揚がある。
そのパネル作品は珍しくモチーフを持って作ったもので、銀河鉄道の風景。
添えた詩は、以下。
たまらなくなって駆け出した
もうどこにもいたくなかった
体は熱を持ち息が切れて頭が冷える
地面に寝転がりまっすぐ空を見る
あああの白いそらの帯がみんな星だというぞ。









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