どびっくり
- すずめや
- 9 時間前
- 読了時間: 2分
愛知への出張の前に、ふと夫が新しい食器が欲しいと言った。
夫は骨董や焼き物が好きなのでいまの間に合わせの食器群に不満があるのだ。
そういえば、前クラフトフェアでマグカップを買ったかっこいい陶芸家さんがちょうどわたしのいるときに名古屋で個展をやるから立ち寄れたら行ってくる、なんて話をした。
夫のお気に入りのごつごつした美しい大きなマグカップを作ったその陶芸家さんは市川さんといって、お互いにSNSでフォローしあっていて、猫の写真にいいねをつけあうゆるい繋がりを持っていたが、はっきりとした面識はない。と思っていた。
今日売り場にふらりと現れたその方は、ラフな格好ながら目つきがなんだかとっても真面目で、お声がけをすると自分は市川だと名乗ってくださった。
あら嬉しい、市川といえば陶芸家の市川だ、名前も確かめた。が、彼はなんとわたしの生まれた小さい町の話をし始めた。
あの公民館を曲がって、〇〇商店のあたりの、あのうちの市川です、と言う。
ど田舎の小学校で、3キロ近くの道を通学するのに小学生たちが班を組む、通学団というのにも一緒にいたことがあるんだと言う。
つまり一緒にあの田舎道を登校した仲だ。
市川さんてあの市川さんですよね、あのクラフトフェアに出てた、陶芸家の。名古屋で個展、されるんですよね。あれ?
どういうこと?????
なんと生家が200メートルほどしか離れていないご近所さんだったのだ。
わたしは小学生のころの記憶なんてほとんどないので全く覚えていなかった。そもそも地元にいたころの記憶全般が朧げである。
彼はわたしの両親のやっていた店でうつわを置いていたこともあるという。
市川さんはわたしのことを両親を通じて認知していたらしく、SNSでのゆるいあの繋がりはそこ由来のものだったらしい。
だだ素敵なうつわを作るかただなあ〜と憧れていただけだったのでもうめちゃくちゃびっくりした。
あのせまい町が嫌で嫌で飛び出してぐちゃぐちゃの道を突き進んでいる道中で見つけた素敵な陶芸家が、同じ町の生まれだって???
なんて奇縁があるもんだ。
市川さんもあの町を飛び出したあと、都会でしばらく暮らし、雪の降る町に住み着いたのだそうだ。
いろいろとお話しさせていただいてお買い物までしていただいて、お見送りをし、しばらく経って、ひとりでご飯を食べて、ひとりで売り場に座っていてもなんだか、嘘だろ?というふわふわしたびっくりのなかに包まれている。





