出発の日
- すずめや

- 12 分前
- 読了時間: 4分
今夜の夜行バスで名古屋に行ってそのあと東京にいくのだ。まる10日間うちをはなれるのでとてもとてもさみしい。
今日の夜中はみんみに三度起こされた。
マァーオと恐ろしい唸り声で起こされ、しっぽがぼんぼんになったみんみは窓の外を睨んでマァーオを繰り返している。近所に住んでいるどろぼうひげの模様の白茶トラだ。どろぼうひげの模様なのでどろぼう猫と呼ぶ。
どろぼう猫はたまにこうやってやってきては唸るみんみをおちょくっている。こんな夜中でも外を出歩くどろぼう猫は家の中でぬくぬく生きているみんみなんかちいとも怖くないようだ。目をきょろきょろさしてこっちをみている。どろぼう猫はちっちゃくて目もおっきくてかわいいのでもっと近くで見てやろうと網戸に頭を押しつけてみたらどろぼう猫に飛びかかられた。網戸がなければ顔面をやられていた。やはり我々のことを舐めているのだ。
どろぼう猫がいなくなって落ち着いてとろとろ眠りに落ち始めたころまたマァーオが始まった。違う窓のとこで唸りまくるみんみ、こっちを見ているどろぼう猫、そのうちあかんべでもしてきそうな顔に見える。
落ち着いてもう一度眠る。けっこう眠ったところでこんどは猫同士のでかい声でのやりとりが聞こえる。かたっぽは怒ってる。こういうのは珍しいのでまた起きて様子を見にいくとなんかぶりぶり怒ってるみんみとモンティーヌが大声で話し合っていた。たぶんどろぼう猫の襲来で敏感になっているみんみがなんか言い過ぎたかやりすぎたかしてモンティーヌが諌めているみたいなかんじだった。モンティーヌはいつももっちりしているがこういうときも落ち着いている。さすが保護猫カフェ出身者だ。揉め事に慣れている。
つうことであんまし眠れず、でも出発前の準備はやたらとやることがありウベベベベというかんじで一生懸命準備した。ウベベベベでなんかもうやんなっちゃって寝転がっているぬげたを起こしてお散歩に行く。ぬげたはちかごろ家のなかではずうっと寝転んでいて、歳をとったし、あと肉がだるだるしている。ぬげたはうちにきてから6キロも太った。
博多で買ってきたおみやげを小分けにしてようやくご近所にもっていく。うまいものは数ある博多ではあるがわたしはにわかせんべいのあの顔がすごく好きで、土産にはできるだけにわかせんべいを買いたくなる。にわかというのは福岡の伝統の演劇?みたいなものらしくそれをいつか観たい。あと土産屋のいちばんいい場所で胸を張っている博多の織物で作った上等なにわかポーチ、あいつをいつか買ってやろうと思っている。
おみやげをわたしたらささげ豆とわらびと山菜取り用のカゴが帰ってきた。なにかをあげるとだいたいわらしべになるからここはすごい。わたしはそんなふうになんかをすっと返せるやつになりてえなあと来てからずっと思ってるけどなかなかそうなれないもんだ。
散歩から帰ってすぐにわらびのあく抜きをして、博多でうち用に買ったごぼ天うどんを作って食べた。出発するのだから前の旅のことを処理してゆくのだ。それから夫のために米を四合炊いて梅を刻み、だしとみりんとごまを混ぜてぜんぶおにぎりにした。
あと氷もできるだけたくさん割っておく。我が家では氷はタッパーに作ってアイスピックで砕いて使う。そのほうが酒もうまいし見た目がよい。わたしは砕けた氷の断面が好きだ。夫はもしかしたらめんどくさがってるかもしれないけどそのことを改めて聞いてみたことはない。
猫たちのトイレも掃除して、そのあいだにもウベベベベと作業をし、なんとかきりがついて風呂に入る。
今夜は仙台までバスで出て、夜行バスに乗り換えて名古屋に行く。ちかごろ飛行機の距離は仙台まで出ればだいたい夜行バスでいけることがわかり、安いし時間の節約になることも多いので気に入って使っている。どこでも眠れるタイプでよかった。叶うならばどこにも出張に行かず家でずーっと過ごしてたいがなかなかそうもいかんのだ。夜行バスに乗ってる間はだいたい寝てるので家から離れてゆく寂しさみたいなものを抱きしめ続けずにすむのもよい。はっと起きてよだれを拭いたら目的地だ。
関西へ飛ぶ飛行機がなくなって、関西出張は基本夜行バスとなったが関西へゆくバスは仙台からしか出てない。仙台盛岡間はバスでニ時間半、新幹線だと一時間。どちらも本数はかなりあるので助かる。
朝、仙台へ夜行バスでたどり着くと仙台朝市をやっているのですごくいい。あそこのラーメンはおいしかった。出張で忙しくさせてしまった夫に珍しい食材を買って帰れるし、夜は夜で愛する半田屋に寄ることができる。半田屋でどんぶり飯と妙にうまいあの豚汁を食って腹がパンチョになって夜行バスに乗り込むと即寝落ち、よいリズムである。
5年目にしてようやく岩手からの出張がこなれてきたようだ。




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