ゆるみ
- すずめや

- 2 日前
- 読了時間: 4分
京都から帰ってきた次の日に初雪が降って、朝はしばらく霜がおりて、昼間もたいそう寒く冬が来てしまったかと観念したけれど今日からしばらく寒さがゆるくなるみたい。
日暮れから雨が降り始めて、この時期の雨はひと雨ごとに冷えていくのが定石だけどしばらく雨のおかげであたたかい日が続くようだ。
とはいえ台所の薪ストーブは一日中焚いている。
前の冬の終わりにホームセンターで安くなっていたので鋳物のストーブがきた。
大家さんの残してくれた北の国からに出てくるようなストーブよりもだいぶ重厚感があって火持ちが良い。
前のストーブはその場で火を焚いているなあというかんじの直接的なあったかさで、それはそれでよかった。
いまの分厚い鋳物のストーブはゆるくずっとあったかい。
夜中にトイレや喉の渇きで起きるとストーブのなかはかすかな熾火になっていて、そこに木っ端や木の皮を少々足して火を起こして薪を足す。
それで朝まで火が持って、ゆるい暖かさは玄関の方にまで漂っている。
玄関を挟んで台所の反対側にあるアトリエの薪ストーブは薪屋のまきじいが安く譲ってくれた鋳物の、かなり大きなものだけれど、錆でこのたび火力調節のねじがはずれ、扉もけっこうがたついており、去年よりあったかさが少なくなったようだ。
本格的に冬が来る前に新しいストーブが欲しいけれど、新品はきっとあったかいけれど、二の足を踏んでいる。
サビサビだけど耐熱塗料を塗ったり煙突に苦戦したり扉を夫がどうにかしようとしてくれたりして手をかけたし。
朝は寝坊して起きたら夫が仕事に出ていた。
午前中に夫が仕事に出る日はぬげたの散歩はわたしの仕事になる。
道端にたまに人がいたりすると、近ごろは声をかけてくれる人が増えた。
今日は旦那さんじゃないんだねー、とか、熊に気をつけてねー、とか。
軽トラで通りがかりにガス屋さんがぬげたにおやつをくれたり、ぬげたが夫と一緒にいたときに出会ったらしい盛岡ナンバーのご老人にりんごをもらったり、ちょくちょくイベントが発生するようになった。
四度目の冬を迎えるこのころ、引きこもりなりに認知されてきたみたいだ。
まあなにせぬげたは可愛いのでそのちからが大きいだろう。
白鳥が来て、羽根を拾う。
なにか事件に巻き込まれた小鳥のちっちゃな羽根はうちの周りに落ちていることがあるけれど、白鳥の白い羽根はやっぱり格別に綺麗。
しかも今回気づいたけれど、落とす羽根にはかなりでかいのもある。白鳥はそれ自体がでかい鳥なのだから当たり前にでかい羽根もあるのだ。
田んぼにたむろしている群れのそばに行くと白鳥たちははんなりと逃げていくけれど、失礼しますよと近づいて羽根を拾いにいく。
そりゃああんなにでかい鳥に抱きつけたら嬉しいだろうけどまず無理そうな距離感だし野生動物にはみだりに触るべきではない。
ぐっとこらえてせめて羽根をいただく。
たくさん落ちているのは小さな羽根だから去年はでかい羽根のことに気づかなかった。
別室暮らしのモンティーヌのために買ったこたつを、モンティーヌははじめ無視していたが近ごろは中に入って伸びている。
安心してもらえたようで嬉しい。
猫がこたつに入らないというのはかなり悲しかったし驚きでもあった。
冬の仕事がひと段落ついたら、モンティーヌのいるこたつで溢れかえった領収書を整理するんだ。
まだまだ、頑張らなくちゃいけない。
けれど今日はぬげたのお散歩でりんごをもらって、でっかい枝も引きずって帰ってきて、ガス屋さんに柿をもらって、薪屋のまきじいにたっぷりのたまごをもらって、割れちゃった炊飯用の土鍋の、新しいものが届き、ひかるごはんをたいて食べ、夫はゆるんだ寒さに調子をこいて凶暴そうなクマが自転車に乗っているプリントの半袖Tシャツでうろうろしている。
猫たちもずっと仕事をするわたしのそばにいてそれぞれ丸くなっていて、もうお仕事は終わりだよと起こすと寝ぼけた様子でアトリエから一緒に出てくる。
まだまだ、頑張らなくちゃいけないけど、平和でゆるんだ日々だ。









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