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  • 執筆者の写真すずめや

にっき

最近はとても早く目が覚めてしまって

目が覚めるたびに、ああ、またこんな時間に、くそ、まだまともじゃないな、なんて思ってしまうのですが

今日は起きたそばから猫が急に、身体の上にどすんとのったので、動かずじっとして、微睡んで、ふつうかな、って時間に起きました。


猫はにやにやしながらずっとわたしを見下ろしていた。


まともに着替えた。

何もない日は寝巻きのまんま、

ずーっとそのまま作業に没頭することが多いんですが、特にコロナ禍の渦中、なんかあんましまともに暮らせていなくて、久しぶりにふつうかな、って時間に起きたから、朝の始まりが久しぶりにふつうかな、ってかんじだったから、以前のようにちゃんと暮らそうか、と思えて。


珈琲も自炊の美味しいごはんも、なげやりでなくちゃんとした。

一人暮らしは長いし、美味しいのが好きなので、なげやりでもまあ美味しくできるような体制は整っているんですけども、ちゃんとまな板でネギを刻むなどした。

(なげやりだとキッチン鋏になります)


もうずっと新しいのをインプットする気になれなくて、映画なんかも昔観たのをなぞったり、それも途中で切っちゃったりってかんじやったんですけども、好きな言葉を綴る人が、好きな映画を紹介していたな、と思い返すことができて、作業中にその映画をちゃんと観れて、そのまま何本かちゃんと観れた。

昔から大好きだったのも大好きなテンションのまま観れた、久しぶりの感覚でした。


だからちゃんとお化粧して、アクセサリーもつけて、気取ってお外に行きたいなって思った。

自分をあげてあげる、を、いまならもっかい取り戻せるかなあと思って。


フランスの人の詩集を持って、廃墟という名の呑みやさんにいきました。

おまかせでお願いしたグラスワインはフランス産で、カウンターの並びで話している女の人は、さっきみた映画の中に出てきた宗教の人と恋をしていた話をしていた。


知っていたけど、お店の中には猫もいた。


その詩集を開くのは久しぶりで、出る間際にどっちにしようかな、って考えていた本の登場人物が詩の中に出てきて、ブロンドの波打つ髪の詩を読んでいるときに、追加で頼んだブロッコリーのからすみかけの、からすみは波打ち金色で、うわあこうだったな、こういうつがいかたをするのがわたしの日々だった、とじわじわ取り戻していくようだった。


店を後にして青色のビールをかって、鴨川へゆく。

白いふわふわの小さな犬に絡まれて、腰掛けたこの場所はそうだ、以前観た、今日観たあの作品のリメイクを観た時にも腰掛けた場所だ。


日が暮れて世界が青く、人のいない川床の上で、アオサギがあの、いつもの、人を食ったような顔で、自分たちの世界を謳歌していた。


世界のしくみはもとには決して戻らないだろう、だからいままでの世界を愛していたことが、飲み込めない大きなものになってしまったような気がして苦しかった。

けれどこうやって変わらない感じ方を今日は取り戻せたので、そうだいつでも、変わらないものはないことを知っていた、ただあまりにもその波がいちどにそこら中にきてしまったから、戸惑っていたのだ。


大丈夫だ大丈夫だ、と


暮れて暮れて光は少なくなりました。

青から藍へ。

緑色の煙草を呑んで、歩いて帰ろう。


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