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  • 執筆者の写真すずめや

気にせんでって

先の一週間の出張中、

岩手は大雪警報まででるほどたくさん雪が降りました。

かわいそうにひとりの夫には手が回らないほどの積もり方だった。


そこで除雪車をおもちの集落の紳士が2度も雪かきをしに来てくれたのです。

その紳士は以前ブログでもかいた、奇声を上げてそりあそびをしていたときに死角で斜めになっていた紳士でして、個人的にはなんか申し訳なかったな…と思い続けていまして、なのにこんな助けに来てくれてありがとうが尽きないのです。

紳士は除雪を仕事でもしているので、今日は家の前の道路を除雪しにきていたのを捕まえて、お礼のお土産を渡したのです。

そしたらほんと、気にせんでって一言言ってくださった。


なんかその、気にせんでって一言が、しんからそれだけ、という響きで言葉に詰まってしまった。

あるじゃん、なんかあるじゃん、

少なくとも今までのコミュニケーション上、気にせんでって言いつつ例えばもらっちゃって申し訳ないなっていうのが滲んでたり、嬉しいなって滲んでたり、おう、助けてやったんだからなって滲んでたり、少なくともなんかあった。

けど本当、なんかあの一言には、気にせんでっていうそれだけの心しかなかったかんじがして、なんかすごい透明な強いものにぶちあたったかんじがして、言葉に詰まった。

思わず目を逸らしてしまった。


お礼をしたかったの、しんからそうだった。

でもわたしは返せる何かをもってないと思ってる。

だからかわりにこれで喜んで欲しいなとか、そういうちいさな下心じみたもの、それが恥ずかしかったのかな。

何も持ってないのが恥ずかしかったかな。

わかんないけど衝撃だった。

うまく言えない。


ここにいると恐ろしい心を持つ人間なんて、いないんじゃないかと思えてくる。

根暗でネガティブを長くやっていた自分からすると信じられない考え。

ニュースを見れば変わらず世界にはたくさんの悪意が散らばっているのがわかる。

でもそういうふうに、思えてくる。

美しいものとは、なんと強い力を持っているのだろう。

わたしは恥ずかしくない人間になりたいな。

いつか、ああいう強いことばを発することのできる人間になれるだろうか。



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