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東京の日々

  • 執筆者の写真: すずめや
    すずめや
  • 9月13日
  • 読了時間: 3分

東京駅目の前のビルにある丸の内丸善での出展も四日めを終えたところ。

日々目まぐるしくすごしている。


そもそも搬入日からいつもより早い新幹線に乗って新宿の世界堂本店に仕入れに行くという詰め込みぶり。

バズーカにしてもらったでかくて重たい紙を背負い、宅配コンテナに入らないサイズのパネル作品をでかい袋でぶらさげ、キャリーをコロコロやりながらそれでも青山でやっているクリフェスの催しに寄り道した。

岩手と違って温度も高いし湿度も高く、そんななか、道案内のスマホを片手に荷物を両手に地下鉄にもぐり地上に出るということをくりかえし、青山の会場につくころにはすっかりくたびれはてていた。

馴染みの面々に優しくしてもらってお喋りをして、お茶までして、もうこの時点で心の中では今日の仕事は済んでいたようなものだ。

だが現実は違うのだった。

まだ電車に乗って丸の内へゆきたくさんの荷物を解いて売り場を作り上げなければならぬ。


次の日は初日だというのに荷物運びがたたって全体的にずっと背中が痛く、久しぶりに浴びるエアコンの風にすっかりやられてしまった。

初日をめがけてきてくださる常連さんたちにお会いできてうれしくお話ししているうちに一日が終わる。

恵まれたことだよなあ、と沁みるように思う。


昼間は大都会のものすごく大きな本屋さん、しかも書店員の経験のある作家仲間曰く仕事面でもとても良い本屋さんに12時間もいて、そこはアーバンでスタイリッシュな丸の内という立地にあって、人間よりバッタが多い山のなかからやってきたわたしはそこで笑顔で接客をして自分が作って持ち込んだ作品を売って、丸の内でビッグカンパニーのサラリーマンたちに混ざってもりもりごはんを食べて、おしゃれなパン屋さんでパンを買って朝ごはんに持ち帰り、姪っ子にあげるためのきらきらのシールを買う。

とんでもなくアーバンに夜を過ごすこともあるし、ひとりで発泡酒を開ける夜もある。

人とずっと関わっているとこんなにも目まぐるしい日々になるのだということをわたしはたぶん、忘れていたか知覚しきれてなかったみたいだ。

なんだかあらためて、ひとの日々とはモノスゴイものだぞ、と思う。


きょうはわたしの売場の隣に、万年筆のセールスアドバイザーとしてピンチヒッター的に熟練の販売員さんがやってきていた。

おしゃべりが好きで明るくて、むかしは全然平気だったのに久しぶりだと足が痛いわという。

御歳は79歳だそうだ。

販売歴はゆうに50年を超え、冗談めかしてわたしは万年筆と一緒に生まれてきたのと笑う。

東京で、モノスゴイ日々を延々と重ねた彼女が隣で笑う。


なんかよお、人生ってすごいよなあ。


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