帰ってきた
- すずめや

- 9月17日
- 読了時間: 5分
丸の内丸善一週間ありがとうございました。
丸の内丸善は東京駅目の前なので、
五時に撤収が開始されると六時二十分の新幹線を諦められない。
撤収にはだいたい一時間超の時間がかかるけれどそれはそれは大急ぎで片付けて毎回むりやり間に合わせている。
今回は一緒の会期だった革職人の友人が自分のブースを手早く片付けられたからといって手伝ってくれて、なんとか間に合った。
おしまいの挨拶もそこそこに大慌てで出ているので厳密には間に合っていないと言えよう。
丸善を飛び出して新幹線の改札に向かう道すがらにスマホでチケットを取るという慌ただしさ。
間に合うという保証がないので帰りはギリギリまでチケットをとらないのだ。
今回は世界堂で買ったバズーカ状態のでかい紙を背負い、キャリーを引き、F6サイズのパネル作品がよっつも入った袋を持ち、その時点でかなり大変だけれどお土産のチーズタルトまで持ってこのうえさらに駅弁を手に入れなければならぬ。
改札はカニ歩きで通らざるを得ない。
汗だくでなんとかホームに滑り込む。
慌ててとったこだまのチケットはよく確認すると最後尾の車両だったのでホームの端から端まで、はやぶさこまちの連結車両を早足で駆け抜けることになった。
車両に乗ったらもう安心だと、車両後部の荷物置き場にパネルとキャリーを置く。
バズーカは紙なので席に持ち込もうとすると窓際のわたしの席のとなりには先客がいた。
さっき荷物を置くのに道を譲ってくれた男性だった。
すみません、と会釈しながら奥の席に倒してもらう。
はあ一安心だ、と、バズーカを脇に置いてテーブルを下げようとするとこれがどうしても広げられない。
バズーカがデカすぎてテーブルを下げる邪魔をするのだ。
とりあえず無理矢理にでもテーブルを下げて、テーブルと座席の空いた隙間にねじ込むか…?とくたびれ果てた頭で考えつつもなにかしらのピタゴラスイッチ的な奇跡が起きないかとテーブルを上げ下げしていると、隣の男性が東北訛りでその荷物、上にあげますか?と声をかけてくれた。
荷物を上に上げる、という選択肢がなぜかまるきり頭になかったのですごく驚いて、確かにですね!とまた男性に席を立ってもらい道を譲ってもらいしてようやく落ち着いた。
もうこれ以上お隣さんに迷惑をかけないぞ、と誓ったが、疲れていて、いつもよりもやたらとペットボトルの蓋を落としたり、お弁当についてきたおしぼりを落としたりしてしまい、そのたびにすみませんすみません、と姿勢を変えていただき助けていただき、眠られている隙に、と今度こそ機会を伺いスマートに車内販売を呼び止めたつもりが薄目を開けてしまわれた。
おそらく気を使ってくださって彼は起きた感を出さなかったのだろうと思う。
せめて彼が先に降りたら最後こそはご迷惑をおかけせずにすむのになあ〜と考えていたが、結局わたしのほうが先に降りたので最後まで道譲り席譲りをさせてしまった。
ちなみに彼はおみやげらしきドーナツの袋をもってはいたものの、何も食べていなかったのでお腹が空いていたんじゃないかと思う。
同じ時間に出発して、わたしより遅く帰る彼のとなりでもりもりお弁当を食べビールを飲んでいたのもなんか悪かったなあ〜と反省すると同時に、東北人らしい優しさに触れてやっぱり東北に帰る人生になってよかったなあ〜とも思った。
夫が駅まで迎えに来てくれていて、ただいまとしつこく言うとおかえりんぎ、と返してくれた。
彼はおかえりをほとんど言ったことがないのでこれは素晴らしい一言だった。
真っ暗な道を車でゆく途中にたぬきがいて、動物がいるのっていいなあ〜と思う。
家に着くと全ての荷物を車に置いてけぼりにして犬と猫に触りにゆく。
夫が荷物を運び込んでくれている間にひさしぶりのみんなに会う。
わたしが一週間いなくなると、ヤン子とみんみはわたしのことを忘れてしまう。
めーめとぬげたとモンティーヌは覚えていてくれるものの、対応自体はわりと冷ややかだ。
とはいえ一晩のうちに、寝ているうちに、ヤン子もみんみも思い出してくれるみたいで朝はみんながわたしの上で寝ていてたいへん嬉しい。
これぞ家。
九時すぎまで寝ていただろうか。
わたしにしては眠りすぎなくらいたっぷり寝て、その前に起きた夫が珈琲豆を煎って、たっぷりの珈琲を淹れてくれていた。
家はぴかぴかに掃除されている。
夫はおかえりもありがとうもお疲れ様とも言えないかわりに、おそらく、こうして伝えてくれているんだなと思う。
出張中にいただいたオンラインショップの注文の発送準備をして、帰る前は仕事せずに一日くらいゆっくり休みたいなあ〜と泣きたい気持ちのときもあったのに、結局やりたくなって紙を広げて絵の具を塗ったり人間椅子のかきうつしを進めたりプレスからあげたノートを仕上げたりなんだかんだしてしまった。
おやつどきにヤマトのお兄さんが集荷に来てくれて、珍しく二人連れで来てくれて、その片方の人はいつか営業所ですずめやのインスタを見ていて、ぬげたのファンですと言ってくれたその人なのだった。
台所で寝ていたぬげただが、お兄さん方の帰り際にひょっこりやってきてふたりに撫でてもらってご満悦だった。
おふたりも笑顔で帰ってゆき、ああ、ここはいいところだなあ、家っていいなあ、と、本当に本当に、思った。









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