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みどりいろの国

  • 執筆者の写真: すずめや
    すずめや
  • 4 日前
  • 読了時間: 3分

冬の雪景色は思わず手を擦り合わせ拝んでしまうような美しさだが、5月も終わりのこの時期のいちめんのみどりいろは勝手に鼓動が速くなるような美しさ。

このあたりはほとんどが落葉樹なので、新緑は文字通りのの新しいみどり。

夏の予感をもってふくらんでいくみどり。

視野のめいっぱい、すべて生まれたばかりの葉だ。


真っ黒いアゲハ蝶が舞っている。

幼いころはあんなにずんぐりとしていて、のろのろと、無防備に、やわらかい体を晒していたのに、今や見る影もない。

繊細なうすい羽でひらひらとどこまでもゆく。


ツツジがさかりでうちのも満開。

山にはちいちゃな桃色のツツジも咲く。

ほんとの名前は知らないが、花のかたちはツツジにそっくり。

しょうぶやあやめの仲間も咲きはじめた。

すみれの仲間はすこし大きいのが咲きはじめた。

りんどうの仲間が、濃い青紫をみせてくれる。

わたしは植物の名前に全然詳しくない。

はじめのころはいちいちスマホのカメラで調べていたけれどキリがなく、また、元気で綺麗ならなんでもいいやと思うようにもなった。


ちびバッタ軍団も元気だ。

米粒よりすこし大きいくらいの茶色のバッタたち、小さすぎるし捕まえられないのでなにバッタだかわからない。

ミントやよもぎなんかの、ほかの虫はよらないような草たちに侵攻してはもりもり食べている。

食べている草をちょっとつつくとほんとうに米粒を撒いたような音をたててばらら、と逃げる。


澄んだ河がごうと鳴って、みどりいろの匂いがして、分かれた小川へ犬が入ってゆく。

歩きながら水を飲んで、わきの草むらで張っていた蜘蛛の巣を頭に引っかけて、笑ってこっちを見る。

犬は前ばかり見て上を見ない。

彼の目にはみどりいろが映るのだろうか。


陽光であたたかくなる窓辺に猫が転がる。

毛皮があつあつになって、やわらかくなって、ひなたの匂いがする。

冬の間はだいたい丸くなっていたが近ごろは伸びて寝転がるようになった。


カメムシの野郎どもも暖かくなって家からほとんど出て行ったので白いレースのカーテンを洗濯して吊るした。

洗濯洗剤の、清潔なにおい。

洗いたてのまっしろな。

窓もみがいて、サッシも拭いた。


種を蒔いたポットはつぎつぎに発芽して植え替えを待っている。

畑は掘り返されてすこしずつ野菜たちのために整えられていく。

今日はアサガオをプランターにうつして、ひまわりを畑にうつして、途中で仕事が届いてしまっておしまいにした。

台所の窓から畑仕事を続ける夫がちいさく見える。


いい季節、いい季節。


 
 
 

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