さっきみたすずめや2019年1月21日読了時間: 1分今日は雲の多い、でも晴れた空でした。流れが速くて、地球が速く回ってしまっているのかと思うほど。すこし位置をずらして、桜の香りの煙草を呑みながら眺めていたら見られました。今年最初の満月が、ちゃんとそこにじっとしていて、ああよかった、速く回っているのは気のせいだった、と気づけた。綺麗だった、よかった。明日も早いんだけど、絵の具を出そうかな。せっかくひかりをあびたから。セロハンのボートにゆられ、ってな。
よもぎ饅頭の昼下がり 後編よもぎ饅頭はコンクリートの道に出て、でんでこでんでこ転がっていった。からりと晴れはしたものの、道路にはまだ湿り気が残っていて、よもぎ饅頭の柔らかな体もうまく傷つかずに転がってゆけた。おなかのなかのつぶあんは初めてのお外への散歩にそりゃあもうわくわくして、 「ちょっとアンタ、よもぎの生えているところはないのかね。わたし、そこまで行ってお外のよもぎに会ってみたいよ。」 と言った。 「そりゃあいい。あっ
よもぎ饅頭の昼下がり 前編つまんねえよなあ、とよもぎ饅頭は和菓子屋幸福堂の店頭で毒づいた。 もうずっとずっとつまんねえんだよなあ。 昔はちいちゃな子供が目を輝かせて饅頭を買いに来たってえのになあ。今じゃおいぼれのじじいかばばあか、しゃらくせえ気取った着物のやつがエラソーに買いにくるばかりだものなあ。 とはいえよもぎ饅頭は老人のお八つになることも、茶席の菓子となることも、べつに嫌だというわけではなかった。 顎の弱った老人が、
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