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さいごの冬

  • 執筆者の写真: すずめや
    すずめや
  • 4 日前
  • 読了時間: 3分

きのうは夜遅くから大風が吹き始めて眠って起きると久しぶりに真っ白の世界。

天気予報を見るとこれが最後の雪であるらしい。最後の雪は世界を塗り替えはしたものの、あっという間に儚く溶けて、お昼前にぬげたの散歩に出たときはもう道路は乾いていた。

ぬげたは久しぶりのふかふかの雪に喜んで、積もった地面に頭やおなかを擦り付けてはあはあ息を荒くしていた。この地面にからだを擦り付けるぬげたの行動を、はじめはジャングルブックのでかい熊のやるような背中掻きに近いものだと思っていたけれどこれはどうも地面の感触を嬉しがっているためらしい。


道路の脇では水仙が芽を伸ばしている。

枯れた落ち葉を突き抜けて芽を伸ばしているものがある。

落ち葉は軽いし、針やナイフで素早く刺すならともかく、水仙の芽の伸びる速度に鋭さならば突き抜けることなどなさそうに思うが、もしかしたら見ないうちにすごい速度で芽を伸ばして落ち葉を突っ切るのかもしれない。それはまばたきのあいだのことかもしれない。数えきれないほど伸びている水仙のうちの一本が、いま目の前でまばたきの間に落ち葉を貫き伸びて、それがわたしには感知できないだけなのかもしれない。


除雪車が道路わきの空きスペースによせた雪のかたまりは山になっていて、散歩の帰りにぬげたはそのうちの一つに登って、山の方から吹き荒れる大風のなかの、なにかを嗅ぎ取ろうとしているようにじっと止まった。

ぬげたが動かないのでわたしも綱を握ったままぼんやりとまわりを見ていた。

屋根より高い山の木々が、葉っぱ一枚もないはだかの幹が、枝が、ぐらぐらと風にゆさぶられていた。少し行ったさきには、風に負けて生きたまま途中で折れてしまった木の、生々しい断面がこちらを向いているのだった。


三毛猫のヤン子は大風と舞う雪にそわそわして窓のあたりを右往左往とうごきまわっていた。風に運ばれてくる落ち葉が気になるのだ。冬のあいだは締め切っていた障子があいて、猫たちは外を見つめることも、太陽を浴びることも、好き勝手にできるようになった。

キジ猫のもんちきはずっとお気に入りの、もうボロボロになった窓際のAmazonの段ボール箱に入ってひかりにあたっていた。もんちきは抱き上げるのを嫌がるが、その定位置には人間をわざわざ呼びつけてあごやあたまを撫でさせるのだ。


冬が終わっていくこの日、引きこもり存分に製作ばかりできたこの日々がおしまいに近づいてゆく。次のことを考えはじめなければいけない。もっと、もっと、作ってばっかりいたかったような気もするし、そろそろこんなに溜め込んだノートたちを外へ出してやらないとと思う気持ちもある。

地面の凍るまえに植え付けたチューリップたちは、いつも春の、はじめの出張に出たあとに伸び始める。花が早く咲くといい。そしていつまでも咲くといい。







 
 
 

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