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はじめての場所

執筆者の写真: すずめやすずめや

更新日:2月24日

先週末、はじめての場所でかねてから憧れていたクラフトフェアに臨んだ。

静岡県浜松市。

浜松というのは地元愛知県にいた思春期のころ、同じくらいの距離にある名古屋よりも行くのが嬉しかった街。

ヤマハ牛耳る音楽の街、落ち着いていて、美術科のある高校が有名で、遊びに行くのに名古屋に行くよりも浜松を選ぶのは大人の選択、という気がして気に入っていた。

美味しくてお高いフルーツタルトのお店があり、親に交通費をせびるときの切り札になった。

あそこのタルトを買って帰るから、と切符代とタルト代をせしめていた。


大人になって、遠くに住んで、飛行機でえっちら再びやってきた浜松の地。

やっぱりなんだか、落ち着いていて静かで、ドラマのセットのようなおしゃれ感がある。


クラフトフェアの会場はずいぶん遠く、一時間に一本程度のバスを逃すとタクシーを使うほかない場所にあった。

車がなければ気軽に来られない会場。

それもクラフトフェア、というかんじがする。

初日は朝搬入であったがまんまとバスを逃しタクシーを捕まえることになった。


到着して、まだ搬入時間には少し早い時間だったが会場にはもうすでにスタッフだけでなく作家とおぼしき人々がさかんに出入りして会場作りを始めているようだった。

どこから入ったらいいのかわからず、また入った途端に身分の確認をされたりするのでないかという恐れをもちながら当選のメールをいつでも開けるようにスマホを握りしめ突入した。

入ってみてもなんかべつにだれもなにも気にしておらず、なんならすれ違い様に会釈のあるしまつ。

この会場にいるものはみんな今日同じイベントで働く誰かであり、それをみな了解しており、今日はみんなで頑張ろうね、みたいな空気が充満していた。

もっとずっと厳しい空気を想像していたので、油断はならんぞと思いつつも気が抜けていくのを感じ、床にマスキングテープですずめや、とバミリをしてあるのをみて私ここにきて良かったんだなと実感した。


岩手にきて出張が遠距離になり、それがあまりにもふつうのことになってしまっていて、浜松までやってきたのに、浜松までわざわざ遠出をしたというのが実感としてなくなっているのに気づいた。

飛行機も電車も、自分で運転しているわけでも漕いでいるわけでもないので、なんかポケっとしてたらつきましたという程度の実感しかない。


はじめてなんですけど、と周りの作家さんに恐る恐る話しかけ、これはこうでいいとかあれはあそこにあるとか色々教えてもらい、あらかた準備ができると会場内の知っている作家さんたちのとこに話しかけにゆき、それで徐々にエンジンをあたためていったかんじ。


お客さまがたはほとんどみんなが初めての方だった。

ちかごろはいつもの場所でいつものお客さまに会う、というかんじになりつつあったのでたいへん新鮮な気持ちであった。

こういうふうにもういちど新しい場所で新しいだれかに会ってみたかったのだ。

主催さんがすごく丁寧にSNSで宣伝をしていらっしゃるので、そこからチェックしてたんですなんて方もおられた。

あとやっぱり作家もの好きの目利きの方はちらほらおられ、そういう方とお話しできたのはクラフトフェアならではのことだった。

いつも出しているような場所でそういう好事家に出会えるのは稀なことだ。


ひさしぶりにたくさん初めての方のために話した。

手で紙を折るところから作っていて、とはじめの説明をなんども繰り返していくうちに、いままでの道のりが順々にページを手繰るように思い起こされるような気がした。

紙を折り重ねてきた分だけ、続けてきたのだった。


いままでつくったノートを縦に重ねればどこまで届くものだろうか。

月まではあんがい近いものらしい。

空に向かって一時間も歩けば着くんだそうだとどこかで聞いた。

それならいままで作ったノートたちを重ねればもう着いているのかもしれない。

他の惑星たちの距離感がどうなっているんだか全くわからないが、せっかくならば金星に届きたい。

美の女神の星は、幼き頃、憧れた星だったのを思い出したから。


※追記

月まではそんなに近くなかった。

なんかのなんかを勘違いしてたみたい。



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