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  • 執筆者の写真すずめや

さそりの星



先日、雫石町の主催の星空観察会というのに行ってきました。

星空観察のプロが夜空を解説し、めちゃくちゃにでかい望遠鏡で夜空の星を見せてくれるというのです。


移住者で、右も左も分からないので、その案内に従いお願いします!といってみたらばお子さまたちの大渋滞で大人のやつではなかったのがわかって恐縮しきりだったのですが…。

(こちらは大人2人、ひとりはツーブロック女でひとりは天パのガタイ良い男で場違い感がすごかった)

(みんな奥様とたくさんのこども、という構成でした)


その星空観察会はご家族でほうぼうに星空の観察を布教している方々の主催でして、天気は快晴、あれだけ降っていた雨もなく、滞りなく星空の観察をさせていただきました。

両手を広げたくらいのでっかいでっかい天体望遠鏡をみっつも持ってきてくださって、間近でみる野球ボールのような大きさの月を見ました。

ご家族でやられている、たぶん家長のかたが難しい望遠鏡を駆使し、奥様が次の大きな望遠鏡を調整し、なんと小学五年生のこども隊長までが大きな望遠鏡を操っておりました。


そのこども隊長が、今の季節では地平線に沈む直前でお月様も半分光っているからそこまで強くはないけれど、という前提でさそりの心臓、アンタレスのひかりを見せてくれました。

月の光で白くもあり、けれど赤くもひかり、一緒に行った夫はこれはルビーかトパーズかなどと難しい話をこども隊長としておりました。

あの憧れのさそりのひかり。


ちかちか瞬いて、ほんとうに生き物のようでした。

お月様は近くにいるから、もうこんなクレーターまで見れたら誰かがいたらわかりますね!ってくらい見えたんですけど、アンタレスのひかりは本当にふしぎな輝きでした。

彦星もみせてもらった、木星もみせてもらった、レーザービームで星座をなぞって、あれが白鳥、三角形もみせてもらった。

憧れもあるのでしょうが、でも、それに比べればささやかな心臓のひかりは、特別な儚さがあり、美しさがあった。


岩手に越してきたのは、宮沢賢治が理想郷だと言っていたからです。

それはいわゆる、推しの推しの場所に来ました!という聖地巡礼の感覚とはまた違って、畏れ多いことですがわたしは賢治さんにいつも共感を覚えるのです。

なにかをそう言っている、というのがわかりづらいと評されがちな彼ですが、なんとなくわかる気がするのです。

だから彼が理想郷というならば、きっとそこはわたしの理想郷でもあるのだろうと思いました。

大好きな人に教えてもらったロックンロールスターがわたしのことを言ってると思うなって反発するように寄り添う歌をうたっていた。

そうだよ、そこまで添ってはあなたにも悪い。


でも同種の人間というのはいると思うのです。

例えばわたしは写真を撮られるのが本当に苦手。

普段いない場所まで持ち上げられるのが苦手。

それが得意分野のひともいる。

それはそれぞれでよきわるきもなし。

でもわたしの苦手をさらっとできちゃうひとと、簡単にともだちになれるかと問われると、いくつかの壁がある。


さそりのひかりは、瞬き、そこいらのちいちゃな星と違って、儚げなのにしっかりと呼吸をしていました。

蠍座のあのこと見られたらよかった。

でも見られなくてよかった。

想いの強い星の光でした。

だから、あんまり強い思い出を乗せすぎないほうがよかったのかも。

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