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帰宅

執筆者の写真: すずめや
すずめや
7 時間前
読了時間: 5分

充実の京都から帰ってきた。

近ごろ夜行バスでいっているので合計で16時間くらいバスに乗るけど初日に到着して最終日に帰ることができるというのも充実の一端を担っていると思う。だいたい催事は前日搬入だからまえのり一泊があるのだ。


昨日まで雨続きだったという話だけどはじめの二日間は綺麗な秋晴れで公園でお昼におにぎりを食べるのも気持ちが良かった。恵文社すぐの公園はアルバイト先すぐの公園でもあったので思い出深い。仲良くなった恵文社スタッフのゆうさんともここで初めて喋ったらしい。わたしはそのとき公園でストロングゼロのガチ缶を呑んでいたらしくあまり記憶にはないけれど。


闘病中の友人とも朝会ってそのまま出勤するなんて可愛いムーヴをかました。彼女の新しい恋人の顔を拝んでやるためでもあったが、想像していたよりも穏やかで安全そうだったのでよかった。まあこういう想像は常に最悪を想定するものだからだいたいは拍子抜けになる。とにかく彼女が快方に向かい続けることを祈る。


15年ぶりに大学の同窓とも会った。あたまがつるつるであった。なんでなんだよって聞いたところなんと仏師になったらしい。その前にきこりもやったらしい。本当になんでなんだよというかんじでいろいろと話は尽きなかった。あたまがつるつるのその友人とそばつるという蕎麦屋に行ってつるつるのつるだなと思った。行きつけのバーでご馳走までしてもらって、鴨川あたりで缶ビールを開けていた頃を懐かしく思う。大人になったもんだ。仏教まわりのトンデモエピソードをたくさん聴いて爆笑した。


恵文社スタッフのゆうさんとも酒を呑みに行った。子どものころえんぴつの頭をしがんでいた話が妙に盛り上がり楽しかった。味、違ったよね〜。あと百万遍の地下にあった、アリスの落ちた穴の底、ミックというバーについてもお互い若い頃常連だったことが判明した。ほんとうに不思議な場所だった。なんかミックのことどっかで書いた気がする。ここだったかな。あと雫石の話もたくさんして、それからもちろん本の話もたくさんして、宝くじを当てるかわたしがベストセラーを出すかして金持ちになったら雫石で本屋を作るから立ち上げに来てくださいねなどと夢のある話をした。彼女がいれば素晴らしい本屋ができることは間違いがない。最近書いて応募した小説を出力したものを押し付けた。

ゆうさんとのこの一夜は恵文社に仕事にくるたびのお楽しみになっていて、いつもそわそわしてしまう。


顔馴染みのお客さまにもたくさん会えた。恵文社コテージはすごくゆったりした空気があるのでみなさんともわりとゆるいかんじでお話できるのが嬉しい。あとなんと絵がふたつも売れた。やったぞ。恵文社コテージのがさがさした白塗りの壁いちめんに絵をかけられるのはそれだけでとても嬉しいことなのに、さらに嬉しかった。絵が売れるのは、ノートが売れるのとは違った種類の嬉しさがある。

あと本当にひさしぶりに大好きだったパン屋さんが来てくれた。一乗寺にあったがいまは移転して、いけなくなって、わたしも岩手に越して。ちょうど行く前にあのパンを久しぶりに食べたくて通販をお願いしようか悩んでいたので嬉しかった。今度頼もう。かわいい反抗期のおじょうさんをお連れになっていて、あの素朴で実直な味のパン屋さんがいまどきの子どもを育てているのが妙に可笑しかった。


ゆうさんが貸してくれたCDのなかにグレングールドのソロがあって、それをかけていたらバイト先でよく喋っていたトロンボーン吹きの紳士がいつものようにトロンボーンを背負ってやってきた。何年ぶりだろう!紳士は耳ざとくグレングールドだねとにやりと笑った。いや詳しいわけじゃないけど結局グレングールドのピアノが好きでねえなどと言うとグレングールドの映画があるとかあのピアニストもいいんだよとか次々にクラッシックの興味深い話をしてくれて、ああそうだこの人はこういういい話をたくさん教えてくれるんだと嬉しくなって盛り上がってしまった。盛り上がっている間に義母が来てくれていたのに気づかずにたいへん失礼をしてしまった。義母はやさしい。いろいろ事情があって結局ご挨拶もせず結婚したのにいつもわたしの身体を気遣ってくださる。彼女もいつまでも健やかでいてくれればと思う。


帰りの夜行バスの出発前にまた闘病中の友人と会う。気晴らしになるならいくらでも付き合う。わたしは病気を治すことができない。でも会ってくだらないおしゃべりをすることくらいならできる。おそばを啜って喫茶店にゆく。ホットミルクを頼んだら赤子のように眠気が来た。彼女は異常なでかさのフロートを飲んでいた。異常にでかいうえにぱんぱんに詰まっていたためストローすら入らず、コースターがびちょびちょになっていた。彼女の食事はいつもあまりにも整然としているので、びちょびちょのコースターが妙に嬉しかった。


夜行バスにのりこむと、一緒に小説の公募をがんばった友人から小説の感想が届いた。くすぐったい。でもとても嬉しい。しかし彼は文章が長いので返信にすこし時間をかける。もちろん同じ熱量でかえさなくてもいいからと、彼らしい気遣いは頂戴している。


夫が生のいちじくを食べたがっていたのに京都では売り切ればかりだった。夜行バスが仙台に着いたら探してみようと思いながら眠る。仙台について、電車に乗って画材屋へ行く。どうしてもほしい紙があったけれど売っていなかった。もうロールで買ってしまおうか。目的の水彩紙の全判はしつこく探しても通販がない。前の東京のとき、売り場を抜けて世界堂に行ったけれどそこではたまたま売り切れだった。しおしおとしてスーパーをめぐるがいちじくがない。しおしお。へとへと。という感じでまたバス。高速バスで盛岡に行く。盛岡ゆきのバスに乗るすこしのあいだにお昼を食べなければならないので吉野家に行くと、なんとタブレットなしだった。こんな吉野家がまだ残っていたとは。人間が注文をうけてくれて人間にお会計をしてもらってなんだか回復する。

盛岡から電車に乗って雫石、雫石から町内ののりあいバス、あねっこバスに乗車。乗客はわたしひとりで、寡黙な運転手さんの車で、世界でいちばん美しい帰り道をみつめる。



 
 
 

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