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散歩

執筆者の写真: すずめや
すずめや
3月12日
読了時間: 2分

今日はよく晴れて美しい日だった。

あんまり外がきらきらしているようなので、窓にかけているビニールを何箇所か取り払った。

まずは作業台むかいの大きな窓の。続いてわきの廊下の。

久しぶりにたっぷりの太陽光が入ってきて、暖かくはなかったけど網戸を開けた。久しぶりに風がすり抜けていく感覚。陽にあたって猫の輪郭が淡くぼやける。発光しているようだ。薄いカーテンも取り払った。洗濯にかけようと思う。その前に窓ガラスを磨かないと。


夫をふきのとう取りに誘うと車を出してくれてすこし遠出の散歩になった。かねてから降りてみたかった川のそばまで降りてみた。冗談みたいに澄んだ水の中にはおさかなはぜんぜんいなかった。川はごろごろのでかい岩や石や木の枝が沈んでいて荒々しい感じの川だ。近くにはうさぎの糞や鹿の糞が落ちていた。うちのまわりにはないものだ。なかなかうさぎは見かけないし、鹿にも会えていないけれど確かにこんなそばにいるのだ。この川の水を飲みに来るのだろう。こんな足場の悪いところでお水を飲むなんて、うちの犬猫は水を飲むのに危険なんていっこもない。自分のボウルからぺちょぺちょ飲むのだ。きっと川から水を飲む動物たちのそんなぺちょぺちょは、そばにいたって聞こえないだろう。水の音にかき消されて、わたしはうさぎの水を飲む音も、鹿の水を飲む音も聞くことはない。


かねてから気になっていたため池にも行ってみた。畑の真ん中にある謎のため池で近くによってみたのはこれが初めてだ。沼だと思っていたが澄んだため池で、濃い灰色の鯉が悠々と泳いでいて驚いた。灰色の鯉の群れのなか、何匹かのヒレが銀色だった。きっとこのため池の鯉たちの王族なのだろう。特別な一家にちがいない。

手を叩いてみたが公園の鯉のように寄ってくることはなかった。頭上で鷹が青い空を背景におおきな円を描いて飛んでいる。夫が石をひとつため池に落とした。水面の波紋が広がってゆくのは思ったよりもずっとゆっくりで、鯉もゆっくり泳いでいて、時間がそこだけ違う流れになったようだった。


白く光る雪の原を我々の足跡が汚してゆく。

ぶらさげたビニール袋はふきのとうの重みでぶらぶら揺れた。うちに帰ると犬も猫も窓のそばにいてそれぞれひかっていた。大きな窓に向かって仕事を続けて、日が暮れて、真っ暗になってゆくのを見ていた。







 
 
 

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