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執筆者の写真すずめや

憧れのロンドン橋

なんだか近ごろイギリスづいていた。

アガサクリスティ原作の映画を観て、

BBC製作のドラマを観て、

ハリーポッターを通しで観なおし、

夜になるとネットオークションでトニーウッドやウェッジウッドのすてきなアンティークのティーポットを眺めてはため息をついていた。


しかし今日ふと気づいた。

ここのところずっと隙間時間を絞り出して作っている我が家の棚たち、

かなりたくさん作っているんだけど、

その棚を塗装するのに使っているワトコオイルがイギリス製だったのだ。

ワトコオイルは色味も艶感もかなり好みでもう木材の塗装はこれっきゃねえと入れ込んでいるのだけど、乾燥にかなりの時間がかかる。

まず木材にやすりがけ、一度塗り、乾いたところで二度塗り、乾かないうちに耐水やすりでウェット研磨、そこから丸一日は乾燥に必要。

いまは気温が低いので本当はもうちょっとほしいところ。

完全硬化までは一週間ほど、オイルの香りがする。

もしかしてこのところのイギリス熱はこのワトコオイルによるものではないのか。


香りの正体というのは極小さな粒子だという。

ワトコオイルの香りにずうっと包まれていたため、体内にイギリスが浸透したのではないか。

わたしのからだに取り込まれたイギリスが遠く故郷を思い出し、マザーグースを歌いながら脳に働きかけたため、イギリスのことばかり考えていたのではないか。

物流が発達し、世界各国のさまざまなものが手に入るようになった現代、それぞれのものから香るそれぞれの国の香りが人間の体内に浸透し、同じように脳に働きかけたため、世界中で今日の多様性重要視の流れができたのではないか。

世界中の世界中のものたちが故郷を愛する香りを放つため、世界の中人々の文化的指針は愛に包括されることになったのである。



と、このように能天気を発展させて考えてみたけれど、世界でおきている恐ろしいことを鑑みれば虚しき空想だ。

せめて我が共和国、この愛すべき家の中を平和に保つ。

ちょっとずつの平和がたくさん集まれば、平和の濃度はちょっとずつでも増すはずだと思うほかない。


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