最寄りのスーパーにはだいたいいつもどじょうがある。
冬のあいだは見なかったけれど春になってどじょうが復活した。
生きているどじょうが発泡スチロールのなかで泳いでいて、100グラム499円。
高いのか安いのか全然見当もつかないし、日々のおかずにどじょうというのも全然ぴんとこない。
はー、ここらではどじょうをいつも食べるのやな…と観覧席から眺めていたどじょう。
そのどじょうがうちにきた。
かめきちの水槽の中にきた。
かめきちはくちびるを持たないのでかりかりの粒状のえさがいつもくちばしからこぼれており、かめきち水槽の掃除はなかなかに大変なのだそうだ。
(かめきちはいつも夫に掃除をしてもらって快適に生きている)
どじょうがいるとかめきちのこぼしたえさを食べてくれるからとってもいいんだそうだ。
スーパーの魚売り場の奥で何かしていた店員さんに目配せして出てきてもらい、どじょうが5匹くらい欲しい…かめの水槽に入れる…と言ったらそうなんだねーと笑って感心したように、甲羅の苔とか食べるのかな?と聞いてくれて、わたしはなんとなくそうそう、と言って、いや違うかめきちの残りの餌を食べてくれるんだ、と横から夫が言った。
店員さんはなんだか楽しそうにちょびっとどじょうをすくって、ならこのちいちゃいのはいらないね、と大きいのを残して袋にいれてくれて、なんだかお金をいただくのが悪いくらいだねと笑った。
80円ぶんのどじょうは帰るまでビニールのなかで大暴れだった。
入れてもらったお水からなぜか這い出そうとすることもあった。
しげしげ顔を見るとひげが生えてて、ぶあついくちびるがある。
このくちびるなら残りのえさはみんな食べるだろうと思った。
いざ水槽に入れるとみんなびっくりして半分くらいはひっくり返って気絶した。
1匹はさっそくかめきちに踏まれていた。
正気ならかめきちに踏まれるような速度ではないはず、もっと慣らしてやればよかったか、と思ったけどつついたらみんな正気に戻った。
くちを必死にぱくぱくしていた。
きっとこのどじょうたちは人間のおかずにされるためお腹がぺこぺこの状態で出荷されているに違いなかった。
かめきちもえさを欲しがったのでいつもより多めにやるとかめきちのこぼしたのをまんまと食べているようだった。
気の毒に思ったらしい夫はかめきちのえさをどじょうが食べれるくらい細かくくだいてやっていた。
家族がふえた。
さすがに見分けられないので、どじょうのドジョーズとしようか。
ドジョーズは油断していると水槽から飛び出して死んでしまうらしい。
ふたをつけてやらなくちゃならない。
夫は昔拾ったうなぎがそのように死んだと教えてくれた。
せっかく増えた家族を目の前に恐ろしい現実もあるものだ。
この家はほんとうに平和でいい家だ。

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