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桜散り

  • 執筆者の写真: すずめや
    すずめや
  • 4月6日
  • 読了時間: 2分

やってくる途中の新幹線の車窓からは、枯れ木に花を咲かせましょうのあの文句がぴったりの風景が流れていた。東京に近づくにつれて開花してゆくさくら、さくら。


いざ到着してみるとほとんどの日はくもりぞら、雨に風も強くて雨まで降り出し、丸善の大きな窓から見える桜も道端の花もどんどこ散ってゆく。雨の日の本屋さんはやっぱり静かで、自動ドアから突入してくるビル風は向かいの作家さんのアクセサリーをぶっとばしてゆく。

晴れたら晴れたで、大きな窓から差し込む直射日光にてんやわんやで出展者さんたちにいろいろとお世話になってしまう始末だ。なんか全体的にごっちゃりとした、へんな一週間。


居候先の妹んちには愛する姪っ子ちゃんがいて、それを楽しみに東京にやってくるのだけどなんと旅行に行ってしまった。朝から晩まで出展し、なんとなく帰りの足取りはとぼとぼとしてしまう。


ごちゃごちゃ考えることがあって、そのうちゲボでも出そうだったけれどおかげでいろいろ整理がついた。散ってゆく桜を見ながら。整然とした日本橋の歩道に散り積もった花弁を、お掃除のお姉さんが履き清めてゆく。ちりとりにおさまったとたんにごみになる桜。春の満月近くの夜に、口笛を吹いてやってくる相撲取り。漫画みたいに電車のドアに、リュックだけ挟まれたスーツのお兄さん。券売機の前、駅の出入り口の前、あるいは道の角で新卒らしきフレッシュスーツたちがわたわたしている。はじめましてのごはんに行って、たらふくご馳走になり雨の夜に傘をささずに知らない道を歩く。そば屋の無料のねぎをありえない量ぶちこんでいるサラリーマン。デパートの裏で土建屋のおにいさんが練った泥をブラシでこそげ落としていた。ほんものの韋駄天コタツをはじめて見て、道端でなめこの株を買った。


家主のいなくなったうちで、夜な夜な蛇口を磨く。洗濯機をまわし、掃除機をかけ、いつか食べてみたいと思っていた冷凍チャーハンを食べてみる。フランスから来たお客さまにマラルメの詩を音読してもらう。ぜんぶの日常が非日常で、たぶんだけどだからこそ、ちょっと落ち着いて、あたらしい方角を見つけた気がする。わたしのもっているものをもういちど見てみよう。非日常から。


腐った不細工が一番始末におえない。

やりきったなんてことは起こらない。

さあもういちど、新しい靴を履いてみよう。







 
 
 

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