季節の変わり目には大風が吹く。
気温は日毎上下激しく、凪の日もあるがだいたい大風が吹き荒れている。
どうやったって隙間だらけの我が家、
隙間にねじ込んでくる春の大風は扉を楽器にして大騒ぎだ。
地面が見え始め、ふきのとうも顔を出し、なぞの濃い緑いろのにょろにょろも出てきた。
春近し、というかんじ。
ぬげたはすっかりうちに慣れてすきあらば寝転がっている怠惰ぶり。
おべっかの笑顔も使わなくなった。
今日は寝転んでいるところにおやつのキャベツをやったら口先だけ動かして怠惰に噛み、立ち上がって転がったのこりを食べようともしなくてだらけていた。
口元に持っていくと食べた。
夫がいる時はもっとふがふがして犬っぽいので、わたしの前ではだらけ犬でいることに決めたらしい。
散歩中におやつを要求して立ち止まることもしばしばで、そういうときにリードを引っ張ると顎周りのお肉が首輪で寄って、エリマキトカゲのようになる。
犬は人間の友というので、穏やかに接するよう心がけていたら、こんなだらけ犬になってしまった。
夫は割と叱ったりじゃれたりの反応が激しいので夫といるときはまたちょっとちがうぬげたになる。
犬は賢いなと思う。
うちでいちばんおとなしいのは次男猫のミリ、次点がぬげた、一番騒がしいのは三男坊のメリ。
夫は仕事上100匹以上の猫をみたけどこんなにしゃべる猫はおらんかったと言い切った。
起きているときはだいたい喋ってるし寝てても寝言を言う。
うちの棚作りと並行して新しい什器をせっせとこさえている。
棚はあらかた完成したけど什器は半分程度といったところ、もう出張まで10日くらいしかないんだから急がなきゃならない。
オイルの乾燥時間を考えると正直ちょっと間に合わないかもなと思っている。
前に使っていた什器も前の前に使っていた什器も手作りで、けっこうその都度がんばってつくるけど、人間は変化のある生き物だし、ずっと同じ感性のままじゃない。
同じ道でも何歩か歩けば景色が違って見える。
そのたび、しっくりこなくなって、また新しい店構えを考える。
今回はしっくりこなくなってからも忙しくて新しいのが作れずにいた期間が長いので早く並べたいなと思う。
早く並べたいけど都会に出るのは恐ろしい、ほんとうに。
特に今回の東京出張は諸事情でひとんちに間借りして自転車で丸の内まで通うことになっているので色々と不慣れで恐ろしい。
まるまる三ヶ月ぶりに家族以外の人と喋り倒す一週間が急にくるのだ。
催事出展に出るお店では最長の営業時間のお店が、日本で一番人が多いだろう東京駅目の前の書店が、春一番の仕事始め。
そこからはじまって4月の後半は関西に飛び秋田に行く。
冬籠りが終わったとたんに、ひと月に東京奈良京都秋田と四ヶ所も飛び、二週間近く留守にする。
季節の変わり目の大風。
そもそもが人見知り気味だし、いつも自信を持って人前に出るわけじゃないけど、今回の春一番はいくら身構えても足りないんじゃないかってくらい自信がない。
体調崩すんじゃないか、自転車で迷うんじゃないか、喋り慣れなくてだれかに失礼なことばを言ってしまうんじゃないか、悪いことを頭の中で具体的にシュミレーションするのは大得意だ。
でもありがたいのは、特にオンラインショップ、それからSNSで、おきゃくさまに忘れられてないってちゃんとわかること。
誰かが待っててくれるのがわかること。
嬉しいメールやメッセージやお手紙をいただけること。
わたしの心根は少々ドンキホーテじみているのだけど、あたたかい読者の目線を知っている恵まれたドンキホーテだ。
春の嵐に立ち向かうとする。

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