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  • すずめや

仔猫脱走

うめはんから帰宅したのは7日の、日もとっぷりと暮れてから。

帰宅の足で晩御飯の買い出しにゆき、久しぶりの自宅のお風呂で足を伸ばしてあったまり、お夕飯をゆっくり食べて、猫たち元気ねと微笑ましく2人の近づいてゆく距離を見、留守中に夫がかけておいてくれた窓際ビニールでずいぶんあったかくなった我が家。

湯たんぽを猫たちと自分たちぶん仕込んでぐっすり眠り。


朝は5時台に起きて次のイベントの準備。

今日中に荷物を出さなきゃ間に合わない。

今回は手提げ袋などもご用意せねばならないので準備が大変だ。

オンラインの出荷もしなくちゃ。

猛烈に準備、よしこれで最低限は間に合うぞ。

猫たちも追いかけっこして楽しそうにしてるわ。

ああひとまず平和になった、午後からはもうひと踏ん張りしよう、先にお昼の準備をしよう。

薪も運んでおこうかな。

がったんごとごと、一輪車で裏から薪を運んでいたらヤマトさんがきてくれた。

ありがとうお世話になります〜。


薪も運んで、さあお昼の準備。

ついでにお湯をわかして仔猫に湯たんぽを新しく作ってやろう。

ミリちゃん新しい湯たんぽよ〜。

と思ったらいない。


2階にもいない、そこらじゅう探してもいない、気配がない。

先住猫のマリが抜けた床の穴のそばで変な顔してる。

ミリが脱走した!!!!

穴から出たか??玄関が空いていたすきか???

今日は雪だのに!!!

仕事に出ていた夫がお昼に帰ってきた。

いつもならそこに合わせてお昼をするけどミリがいない、いない、いないので探す探す探す。

声をかけてもそもそもあの子はビビりだからお返事が帰ってくる期待は薄い。

家の周りをくまなく捜索、見つからない!


一旦落ち着こうとお互いお腹もぺこぺこだったためご飯を食べて、もう一度捜索に出る。

ワイヤレスのスピーカーをiPhoneに繋げて、YouTubeに載ってた"猫が絶対寄ってくる音"なるものを大音量で流して捜索。

まわりになにもない我が家、もし山の方までいってしまっていたら呼び声なんて届かない。

スピーカーの音はこだまする。

何周したんだかわからないくらい回った。

夫は自転車で捜索にでたらしい。

めちゃくちゃ広い周辺だからいつもは車移動だけどエンジン音でミリがよけいにびびるかもしれない。


日が暮れてしまった。

気温はどんどん下がる。

合間合間にスマホで迷子猫の捜索方法について調べるけれど、仔猫はまだ筋肉も少ないから低体温症になっているかも、とか縁起でもない話ばかりが目についてしまう。

玄関に猫砂をまいて、ごはんとベッドを置いて、スピーカーで音を流して扉を開けたまましばらく待つ。

じっとしていると嫌なことばかり考えてしまうから玄関先でジグソーパズルを広げた。

しばらくしたら集落のお世話になっているお姉さんが大丈夫??と来てくれた。

自転車で捜索に行った夫は集落の一番先のお姉さんのうちまで行って、仔猫を見かけたら教えてくれと言ってきたらしい。

なんかすごいほっとして、お姉さんに近所の猫事情などを聞いたりしてしばらく話していると、あれっ、なんか動いた?!と。

談笑の声に釣られて出てきたか?!と捜索するも見つからず、でもなんかあったかい気持ちをお裾分けしてもらったので少し気持ちも緩んで、まだしばらくは探したけれど一旦お風呂に入ってごはんを食べようとなった。

夜のほうが猫は動き出すとのこと。

昼間は車も通るしお外にびっくりしてじっとしていることが多いとか。

夫があったかい大根と手羽の煮物を作ってくれて、少し落ち着いた。

玄関は開け放して寝た。


少し眠って、起きて、家の中をひとまわり、いない、家の外をひとまわり、いない、眠る、起きる、捜索、眠る、起きる、捜索、眠る。

玄関のごはんはすこしも減っていないみたい。

朝方、屋根から雪が轟音で落ちてきた。

地響きかと思うほど、雷かと思うほどのものすごい音がした。

まだそんなに積もっていなくて溶けかけの水混じりだからよけいに水分のあるすごい音がする。

あの子はこんな音を聞いたら相当に怖がるだろう。


朝の5時台、いつもわたしが起き出す時間、あの子がよく鳴く時間、私が起きてきた気配に気づいていつも鳴いてごはんをねだる時間。

薪ストーブに火を起こしながら耳を澄ます。

雪があるとまわりがしんとしている。

虫も、葉も、なくなっている。

音を出すものはない。

先住猫のマリがそばにくる。

にゃあにゃあ鳴いて撫でろと催促。

よしよししていると、あれ、ミリの声もする。

にゃーん、にゃーん、二度、呼んでいる声。


声が聞こえた、と夫に伝えて外へ捜索に出る。

名前を呼ぶ、できるだけやさしく呼ぶ。

でもいない、もしかしたら幻聴だったのかもしれないとぼやいて、寝不足で頭がぼうっとしていたのとあんまりネガティヴになりすぎていたので布団にもう一度もぐった。


浅い眠りのてっぺんから誰かがおーい、と呼んだ。

誰?と起きると夫の姿がない。

我が家には床の抜けている部屋、腐ってしまっている部屋が3つあり、昨日の捜索で夫はふたつの部屋の床をぶち抜いて床下の捜索をしていた。

3つ目の部屋の下から声がする、床が抜けている。

床下から夫が、ミリを見つけたと呼んでいる。

外から逃げられそうな穴をテープで塞いでくれー。


大急ぎで外の穴をテープで塞いでもどる、

夫では通り抜けられない穴の奥にミリが逃げ込んだらしい。

服を着替えてスマホを懐中電灯にしてわたしも床下へ潜る。

夫が小さな穴に挟まっていて、その様子があんまりで笑ってしまった。

這いつくばっていくつも角を曲がり、小さな穴をどうにか頭を曲げて通り抜け、すみっこに怯えてうずくまっている仔猫を捕獲!

ミリ!!体も冷えてない!!暖房で温まっている場所の下にいたんだ!!朝のいつもの薪ストーブの火おこしの音で鳴いてくれたんだ!幻聴じゃなかった!!


二人這いつくばってまた来た道を戻る。

小さい穴は一人しか通れないので交代でミリを預けあいながら地上へむかう。

夫が夫にとって最難関の小さい穴にぎゅうぎゅうになって必死に通っているとき、抱いていたミリは私の持ってきたごはんをぺろぺろ食べており大変な対比。

ぶるぶる震えながらもごはんを食べてる、よかった。

ようよう地上に戻り、ミリのお部屋にご案内、したらすり抜けて2階にダッシュ。

わたしも這いつくばったせいで咄嗟に立てずにああー、と情けない声を出すしかなかった。

だけどちゃんと2階にいた!

ミリが家の中にいる!


なんて嬉しいことだろう。

さっと捕まえて部屋に戻す。

ごはんをちょっとたべてホットカーペットの下に潜った。

震えていた、怖かったね、ちょっとほっといてあげようか。

ありがとうね夫ちゃん、という間に夫は穴の空いた床をテープと段ボールでふさぎにかかっていた。

私はもう一度戻って震えが止まるまでミリを抱きしめていた。

マリはどかんとストーブのそばの自分のクッションにすわってほかほかしていた。


夫曰く、マリがたまに床下を気にするそぶりをしていたこと、わたしが鳴き声を聴いたことで近くにいると検討をつけていたようだ。

朝わたしが二度目の眠りに入ったすきに手柄を立てようと3つ目の部屋の床をぶち抜いて、ミリを発見したはいいものの、岩手にきてから少し豊満になった体で通れない穴の奥にミリが逃げ込んだのでしょうがなくわたしを呼んだらしい。

奮発して買ったすごいあったかいインナーのまま潜ったためすごいあったかいインナーに穴が空いた、目になんかはいっちゃってできものになった、とこの人は苦労が終わってから頑張ったことを色々言う。

平和なうちが無事に戻った。

朝からなにも食べてないね、お昼にしようね。


というわけで今週末のイベントは本当に最低限の準備しかできませんでした。

もうこれも縁とかタイミングとかのなんかやし、東京は来年たくさんいきますのでどうかご容赦くださいませ。

もう無理やー、とあきらめて、ミリが見つかって新幹線の時間までのあいだ、本当に久しぶりに家でゆっくり過ごせてすごい多幸感を味わいました。

丸一日ちかく、我が家が平和から遠ざかっていたのだ。

こんなことははじめてのことだったのだ。

しかし平和は戻った。

めでたしめでたし、えばえばあふた。



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