薪が崩れる。
わたしが積むと薪が崩れる。
去年まではそばの小屋にみっちりと詰めていた薪だが、今年はその小屋に車を入れたいということになって、隣の物置スペース(といってもでかい)に薪を入れていこうということになった。
冬場、車に積もった雪を落としてからの雪かきが手間であるという理由だ。
以前まで薪を詰めていた小屋では壁に沿って薪を積んでおり、薪が崩れたことはなかった。
新しい場所にはまだまだたくさんの残留物があって、壁を使うのは難しいので鉄のラックを買ったりブロックに24材を渡したものを下敷きにして積んでいくことにした。
その鉄のラックである。
けっこういい値段がするのできりつめつつ、まあでも一回買えば何年ももつだろう、お金のかかるのは初回限りだがんばるぞ、と思っていたが積んだ薪が崩れたせいでラックの足がひしゃげてひとつは使えなくなってしまい、もうひとつもなんだかゆがんでしまっている。
それでも負けんぞと頑張って積み直したその薪がまた崩れていた。
ゆがんでいたからだめだったんだろうか。
積んでは崩れ積んでは崩れ、ここは賽の河原であろうか。
軽トラさえあれば残留物をごみセンターにもっていって物置をすっきりさせ、壁沿いに薪を積むこともできるのだけど軽トラがない。
近くのホームセンターでは軽トラのレンタルがあるけれども往復40分はかかるその場所のレンタル時間は60分であり、とてもごみを捨てられる時間的余裕はなさそうである。
ではごみやさんを呼んでいちどきに処理してもらおう!というのを引越してくる前に大家さんも考えてくださって、見積もりをとったところたいへんな金額を提示されてしまったと聞いた。
それで大家さんは集落の皆さんと手分けしてちょっとずつちょっとずつ処分をしてくださったのだ。
我々も大家さんに習ってちょっとずつちょっとずつ処分をしていったが、その結果我々の小さな車にはのらないでっかい残留物が残った。
手詰まりである。
わたしは崩れるのを承知でそれでも薪を積み続けるしかない。
出張があって崩れた薪をしばらくそのままにしてしまっていたことがあったが、そうしておくとカビだの虫だのがついてせっかくの薪が可哀想になるのである。なっていたのである。
川や滝にかこまれた山の中の我が家、すこし雨が降れば湿気というよりもはや空気が潤んでいる。
地面に放置は薪にとってとてもよくないのだ。
それに薪のことを愛している。
薪ストーブの暖は最高に気持ち良い。
石油ストーブも作業部屋では使っているが本当は全部の暖を薪ストーブにしたい。
真っ白な寒い冬、家の中で火を燃やし続けたい。
薪にはがんばってもらわなきゃならないんだからそのぶん手をかけてやらなきゃならない。
苦しくとも薪のためだ。
あたたかな冬のためだ。
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