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執筆者の写真すずめや

花植えとマラソン

集落の行事が続いた。


まずはお花植え。

空いてる場所にみんなでプランターに植えたお花を飾る地域美化の一環らしい。

用意されたプランターに土をつめてお花の並びがどうこうとかいいながら花の苗を植える。

そっちお水足りてる?とかいいながらみんなで植える。

お花の苗が余っちゃったとかいうことになって、そしたら近くの人がうちにあいてるプランターがあるとかいって持ってきて、そのプランターはお手製の木製のプランターであった。

植えたプランターを運んでこのほうが見栄えがいいとかなんとかいいながら並べてさいごにはみんなで記念撮影までする。

ここが世界一平和な我々のすみかだぜ…と心底思う。


はじめて岩手に来たとき、街に花が多いのに驚いた。

プランターに、かわいい花が植っていて、それがそこらじゅうに置いてある。

川沿いとか、ベンチとベンチのすきまとか、歩道とか、今回みたいに空き地にとか。

その花はチューリップとかマリーゴールドとかそういうかわいいやつで、例えば東京なんかも花や緑は意外と多いよなと思うけど、そこにはきちんとしたやつが植っていてこっちのような、なんか、素でかわいい〜とか言えるかんじではない。

なにげない日常にもある奇跡に気づくための装置、みたいな、ちょっとこれ見てよいいでしょ、みたいな雰囲気が全くないのが岩手のプランター花のすごいところである。

雑誌のモデルさんのかわいさと子猫のかわいさとの違いとでも言おうか。

むろんプランター花は子猫ちゃんである。


マラソン大会はその次の日にあった。

なので花植えの解散のときにみんな明日は何時ね〜とかいいながら解散してそれがとてもよかった。

前回のマラソン大会のとき(つまり一年前)は、まだまだなんとなく緊張が抜けていなくて固かったように思うけどもうちかごろはずいぶん力が抜けてきた。

我々の集落沿いがマラソンコースになっていて、みんなで休憩所を運営する。

テントをたて、机を並べ、くだものを切ったり選手のための飲み物やつまめるなにかを用意する。

品物は基本的に大会の運営さんが揃えてくれていて、我々はそれを並べ、適宜ランナーに提供していく。


今回は集落にいるちびっ子たちもお手伝いに来ていた。

ちびっ子たちは以前わたしが出張でいないうちに我が家にやってきて夫と仲良くなったらしいちびっ子たちでわたしはぜひ一緒にシャボン玉をやりたいと考えている。

姪っ子がいま三歳だし、それより少し大きなちびっ子たちと触れ合うのは姪っ子との将来への訓練にもなるだろう。

夫はちびっ子たちにずいぶん懐かれているようだった。

みんなでどっか遠くに虫を見つけにいったりしていた。

わたしは七歳のこどもにいっせーのせを教えた。

まだ数字が難しいみたいで、あの一瞬の足し算はわかったりわからなかったりしていたけど、それでもなんかすごく楽しそうにしていたので子どもってばほんとすげえなと思った。


大人たちともずいぶんくだけて喋れるようになった。

謎であった家族構成とか我が家の昔の歴史とか下の名前とかを改めて聞くこととかもできた。

なんかふつうの会話?っていうのか、まあまさに文字通りの日常会話か、そういうのがいっぱいできて、よかったよかったであった。

タスキをわたす駅伝ランナーたちの喜びようをみて青春だねえ〜って言ったり、あれいまの仮装の人は去年もいましたかとか、地域のチャイムがうちは聞こえないけどうちは聞こえるとか、消防団がどうのとか、そういうやつだ。


やっぱよそもんだよなっていう肩身の狭さをほんとに勝手に感じてぎゅってなってたりしたがなんかもう大丈夫になったようだ。

この肩身の狭さを勝手に感じていたというのの要因は、まあ大なり小なり前に住んでたのが京都だったっていうのがあると思う。

あそこではよそもんとの一線をかなり見えづらい方法で(でも気づくとこれ線というより溝だと思う)引くので、こっちにもそういうのがあるのじゃないかと疑心暗鬼になっていたのだ。

ほかのとこはわからないが、この集落には落ちたら助からないような溝はないみたいでよかった。


平和。

平和は最高。

ほんと我が世界平和。

みんなの世界も平和であれ。



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