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緩みゆく憎しみ

  • 執筆者の写真: すずめや
    すずめや
  • 5月16日
  • 読了時間: 2分

カメムシの野郎のことをすごく憎んでいることは常々書いてきたが、ふと気づくといまはそこまでの感情を持っていない。

春カメムシの季節であるのに。


ほかにごちゃごちゃ抱えていることがあるというのも大きいだろうが、なんだか執着がすっと抜けた。

ガムテープを片手に、ペットボトルで自作した屁こき捕獲機を片手に、すべての個体を屠ってやるぞと爛々と目を輝かせて窓際をうろつくのは絶対に異常なのでまあ落ち着いてよかったと言えよう。


抱えているものの大きさにすりつぶされそうになりつつもそれでもこの世界は美しい。

長い出張からこの家に帰ってきて本当に思う。

ぴかぴかの葉の群れや可憐な花々、空のいろのなかを泳ぐような景色。

街にいたころは隠れた小人を探すように味わっていた美しさをここでは全身に浴びることができる。

まあつまり離れると落ち込みやすくなるということと表裏一体なわけだけれどそれでもここに場所があるのはすてきなことだ。


暖かくなってきて、昼間は窓を開けられるようになった。

ぽかぽかの陽にあたって犬がごろりと寝転がる。

猫は並んでお外の鳥を見たり風に当たったりしている。

夕方になって風が冷たくなるので窓を閉める。


冬の間はこもっていた空気がいまは家じゅうを好きに流れていく。

現実の問題は具体的になにが変わるわけでもない、だけどここがあるのは、ここがあるので、もういちど能天気になれるのだ。



 
 
 

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