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  • すずめや

仔猫の愛撫

東京からかえり、今日はさすがにゆっくりしよう。

と思っていたけどなんだかふつうに早めに起きてしまった。

ストーブの火を起こして仔猫の部屋を見にいく。

そうだった、朝方いつもの時間に仔猫が鳴くから起きたんだ。


いつもならそのまま仕事にはいるけれど今日はゆっくりするんだ。

寝ぼけながら普段朝食を摂らない夫がお腹がすいたと言っていたので粉と卵と牛乳を適当に混ぜて甘いもの好きの夫のためにパンケーキを焼いた。

食いしん坊は何かを作ってる音で起きてきた。

朝食を終えて薪を運ぶ。

もう数日で本当の冬が来る。

雪が積もる前に、奥の薪小屋の薪をできるだけ近くに置いておこう。

薪小屋の薪をお勝手に少し貯めて置く。

薪を運ぶのは毎日の仕事の中でも好きな仕事だ。

猫が薪ストーブを愛しているので、すごくいいことをしている気になる。


鉄フライパンの鉄子の調子が悪いのでリセットをしようと以前から言っていたので黒い鉄子を銀色になるまで磨く。

しかしわたしにはこういう根性がたりないため見かねた夫が途中で交代した。

鉄子は銀色になり、また油を注がれたり野菜くずを炒めたり煙が出るまで焼かれたりして新しい黒色の鉄子になった。


壁の漆喰塗り、途中のまま。

これも忙しくて夫に任せきりだったので自分でもやってみようとすこし塗ってみた。

ずっと漆喰塗りはやりたいことだったのにずいぶん長い間できなかった。

一面仕上げたけれど、夫のように平滑には塗れなかった。

自分の作業場を塗るときはラフ仕上げということにしようと思う。


切手を買いに郵便局へ行った。

郵便局のお姉さんが分厚いファイルをだしてきてあれやこれやと選ぶ。

お姉さんは我々が切手を選んでいるのをずいぶん楽しんでくれていて、切手を買いに来てくれたのがすごく嬉しいみたいな笑顔でずっと笑っていて、郵便局を出るときは奥で作業していたおじさんまで立ち上がってありがとうございましたと合唱してくれた。

なんて楽しそうで素敵なひとだったろうね、と夫に言うと、きっとここは日本でいちばん楽ちんな郵便局だから笑っているのだと冗談まじりに言った。

でもほんとにそうかもしれない。


お昼はパスタをぱぱっと作った。

ストーブの上にお鍋がいつも乗っていて湿気の保持をしているので湯を沸かす待ちが少なくてすむのでほんとうにぱぱっと作れる。

ここのところしばらく夫にご飯を作ってもらってばかりで仕事しかしてなかった。

夫はなにか研究でもしているのか背後からときどき興味深げに様子見にきた。

もともと料理をする人ではなかった夫、ガチンコの自炊勢だったわたし、きっと手際もちがうだろう。

慣れないことをしてくれている。


昼過ぎはすこし昼寝をした。

昨日も遅かったのに普通に起きてしまったし、お昼はきもち多かった。

毛布を引きずって仔猫の部屋に入って横になった。

仔猫はずいぶん嬉しがった。

横になっているのに毛布から出たり入ったり、丸くなったかと思ったら出て行って、はみ出た足先に擦り寄り、手のひらを探して擦り寄り、ずうっとゴロゴロ言って、あごや鼻先にはつねに仔猫の毛先が触れていて、ぜんぜん落ち着く様子がなかった。

ずうっと嬉しくてたまらないみたいだった。

その間に少し眠った。

眠って、仔猫の愛撫でまた起きて、眠った。


多幸感のなか起きて、夫は夫で先住猫のそばで昼寝をしていた。

これはあんまりにもよい日である。

仕事はしないと思ったけど絵の具をといて紙を染めた。

あかるい、いい色ができた。

床材にオイルを塗って、お風呂を沸かして、今日ははやく晩ごはんにして、映画でも観てよく眠ろう。

明日からまた、がんばろうね。


いままで苦しみや衝動やなにかそういうあかあかと燃えるものがエンジンだった。

でもこっちに暮らし始めてから、この家でこの家族と暮らし始めてから、そうでないものから生み出せるようになった。

楽ちんからなにかができるなんてそんなことない、生み出すにはからだや魂を削るしかない、それだけが。

そう思っていたし信じてそう作ってきた。

そうでないこともあるのかもしれない。

楽ちんな郵便局では買った切手に素敵な笑顔がついてきた。

ただ楽しんでものを作る、よき環境に身を預ける、それって甘いことと思っていたけど、それができるのって修行ののちだったのかもしれない。

いや大成したつもりは毛頭ないけど、まだまだ鍛錬は積み続けたいけど、道のりの途中に決まっているのやけど、燃える道は抜けたのかもしんないな。

これからどういうふうに成るのかな。

こんなふうに休むことなんか、ずっとできなかったんだ。

けどできるようになった。

変わっていった、なんかな。



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