• すずめや

ワンダフルライフ

もうすでにご承知おきのことかもしれませんが

あなたはお亡くなりになりました。

ご愁傷様です。

これから、あなたの人生を振り返って、

いちばん大切な思い出を決めてください。

その思い出を、我々が再現した映像を作ります。

その映像をみて、そのときの思いが

鮮明に蘇ったまさにそのとき、

あなたはその思い出だけを抱えて

あちらへいくことになります。

思い出を決める期間は3日間。

そのあと、再現映像の撮影にかかります。


という一週間を描いた映画です。

是枝監督は学生のころから大好きです。

きっかけは、毎週働きにいっていたカフェのマスターのご趣味でありました。

天井からぶら下げられていた棚に、ずらっと並んでいたな、VHSとDVDが混ざっていた。

マスターにはほかに、ビートルズと忌野清志郎、森見登美彦、ジムジャームッシュやなんかを教えてもらいました。

いや無口なひとだったんで、店に所狭しと並んでいる本や映画のなかから、マスターのかけるBGMから、勝手に学んだんですけど。

たぶんマスター、わたしがけっこうサブカル的に影響されたこともしらないんじゃないかな。

そんくらい、無口でした。

5年以上いたけども。


はい。

是枝監督作品のなかでも特によく観かえす一本であります。

さきほども流しながら作業をしていたんであります。

映像も覚えているので耳からの情報だけで観ている状態にちかいんであります。

観るたびに、思い出、わたしだったら思い出、どれにしようかなあって考えるんです。


きょうはね、浮かびました。

10代おわりかけのころ。

高校生だったと思うんですけども、一編の物語を完成させたことがあります。

ムーンリバー、という題名で、月の橋をわたってきた女の子と男の子の一晩のやりとりと、陽が登って月が見えなくなって、それで女の子も消えてしまった話。

とってもよくかけたんです。

だからだいじにとってあって、大学進学でひとりぐらしになる、の荷物の中にもだいじにいれていて、ところが。

なんかのきっかけで、学科の勉強かんけいなく好き勝手に展示会しようぜ!なんか作ってさ!ってまあそれも学科のちがう、気の合うなかまたちと複数人での展示をやったときに、ムーンリバーに絵をつけて展示しようとおもったんですが。

無いんですよねえ、原稿が。

それでもとってもよくかけていたし、気に入っていてなんども見返していて大筋もなんとなくの細かい語感も覚えていて、再現して、書き起こして、絵もつけて飾ったんですけども。

それはちゃんと手元にあるんですけども。

やっぱなんか、ちがうんですよね。

その、言い回しとかです、ことばの細かいリズム。

一語一句ほんとうに気に入っていた文章だったの。

人生でひとつ思い出をかかえてあちらにゆくんなら、あの文章をかかえていきたいなあ、と、今日は思ったんでした。

高校生なんてかわいいしね。


思い出をかかえてゆくときは、その思い出だけでゆけるんだそうです。

そのまえやうしろの思い出は、なくて、その一番の幸せだけをかかえてゆけるんだそうです。

映画の登場人物のひとりが、とても苦しい人生だったと、持ってゆく思い出なんかないよ、と溢すんですが、ふとそう聞いて、そうか、と言って、幼少時の思い出を選んでゆきました。

みんながなにを選んだか書いちゃいそうになりましたけどそれはアレですね、ネタバレですね!

是非ご覧になってください。

いつかお会いできたとき、そんな話もできたら嬉しい。


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