top of page
検索
  • 執筆者の写真すずめや

むねいっぱいのビー玉

おばあちゃん猫、マリの調子が悪い。

昨日は元気がなくて、いつもよりぜんぜん動かなくて、お外にお散歩に連れ出してもあんまり歩こうとしなかった。

今朝は発作のような感じで後ろ足がもつれ、うまく立てなくなるのがつづいた。

朝イチで病院へゆき、レントゲンをとってもらった。


彼女の胸にはこぼしてしまったビー玉のようなたくさんの丸い影があった。

こんなふうな影は、悪性の腫瘍だそうだ。

猫にはとても珍しい、肺癌とのことだ。


何年か前に体の外側に腫瘍ができたことがあった。

それはそのときに手術でとったのだけど、たぶん、そいつが転移した。

足がもつれるのはその腫瘍が神経を圧迫するからだそうだ。

こんなにたくさんの腫瘍で、老猫では、手術もないだろう。


腫瘍を一時的に抑えるお薬をもらって、注射を一本して帰ってきた。

平たい段ボールに収まってじっとしている。

こちらの目をのぞきこんで鳴く、いつもの調子が、もうたまらなく悲しい。

使えなかった時間を数えそうになって、堪える。

後悔を考えそうになって、堪える。


病院に行く前に夫が、働いている保護猫保護犬の施設のボスにマリの動画を送って知見を授けてもらった。

あれか、これか、たぶん。

でもそのどれも、まだ打つ手のある病だったように思える。

この病に比べれば。


嫌だ嫌だをしたってなんともならないんだから、ただマリのためにできるだけ美味しいごはんをやる。

食べなくなったら本当に危険だそうだ。

食い意地の強さは飼い主に似た。

チュールを一本とちいちゃなパウチを食べた。

カリカリをふやかして夫がチュールをかけてくれた。

そいつはまだのこっているけど、さっき食べたからかもしれない。

でも食べられないのかもしれない。

嫌なことを考えてしまいそうになり、代わりにただ泣いて考えを散らせる。

呼吸が深い。


マリのみえないところでぐすぐすしていたら次男猫のミリが膝に登って腕を枕に、もう片方の手で喉を撫でるよう要求してきた。

ミリはずっしりと重く、あたたかくて、若い。


ほんとうは朝、マリの足がもつれたとき、その背中を撫ぜたとき、死の気配がそこにあるように感じた。

そんなの縁起でもないと、思ったけれど、けれど間違ってなかったみたいだ。



最新記事

すべて表示

天変地異かも

人生の半分くらいを荒れた穴ぐらで過ごした。 穴ぐらではリュックを背負わされ、そこにたくさんの荷物が入って、たいへんに重たくなったけれども、とにかく進まなければ出口がないということだけを感じていて進んで進んだ。 そのときの荷物のなかの、もうもはやアイデンティティの一部と化したような硬くて重たいやつが、ほんとうは全然そんなんじゃなかったってことがわかった。 わたしはしあわせものだったのだ。 穴ぐらから

マリのソファ

きのうは次男坊と三男坊が長女マリのお気に入りだったソファにのぼって人間のおかずのお刺身をかっぱらおうとした。 もうしょうがないなあって言って小さく小さくお刺身を切ってあげた。 マリはすぐ人間のおかずをねだる猫だった。 このふたりはあんまりそういうことしない。 だから久しぶりにおかずを猫にあげた。 マリがここにいたのを、しっかりとした手触りとともに思い出した。 彼女が天国に行ったこと。 寂しいけど、

Commentaires


bottom of page