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執筆者の写真すずめや

ほしをつかまえるひとに会った話

更新日:2019年11月24日

まだちょっともちゃついておりますが香嵐渓、デザフェス、どうもありがとうございました!!

二日おきの二日間の出店がつづきました。

荷物を送る関係でもうほぼぶっつづけ気分。出店メインの作家さんたちはすげいなあ。

渓谷と紅葉にかこまれてやまのなかで仲間らとお鍋をつつき酒を喰らい昼間は昼間で観光に来ているにこにこ顔のみなさんと楽しくお話しながら自分らも五平餅だの唐揚げだのの屋台飯を食べるというまあ正直食べてばっかりだったんですけどまあ旅行地だからさ!!

おいしかったよ!!

ずっとお腹いっぱいでした!!

お土産に野菜やらくるみやら手に入れました!!

あのー、そいで空が綺麗なんですよ。

山深く、夜も光が少なくて星空がもうすごいのね。

宇宙好きのパイセンに夜、お願いして星を見に連れてってもらったのです。

もともと山におりますからすこし上ると見えなかった星もたくさんみえましてそれはそれはよかったです。

誰もおらん駐車場に寝っ転がって目の前いっぱいの星空、背中からしんしん冷えてくるんですが耐えられねえ!ってなるまでいっぱいを見つめてぷかぷか煙草をふかしましたです。

でも駐車場には街灯がありまして、もう少しいいとこねえだろかとちょっと動きましたらば、なにやら赤いライトを頭につけて、大きなバンをおともにして、でかい望遠鏡みたいのをセットして、脇に小さな机を置いて、パソコンをさわっているお爺さんがおられました。

パイセンが話しかけてくだすって、

こんばんわ〜、何してらっしゃるんですか〜?

見えないものを撮っています〜だって。

ぜんぜん知らなかったんですけど、普段見えない星雲の写真って、撮れるんですって。

でかい望遠鏡みたいのはカメラ付きで、そのカメラには動く星空、星をとらえるための装置がついていて、刻一刻と位置を変える星たちを追いかけて、何分に一枚、カメラのシャッターがかしゃんといって、それを何枚もパソコンでかさねて、そうすると星雲のすがたが現れるんだそうです。

肉眼では捉えられないけれど、確かにそこにある、遠くの遠くのほしのひかり。

詳しくいろいろお話ししてくださいました。

あの星の、あのあたりにこんな星雲があって、あの奥にばら雲星雲、すばるのひかりはこんなふうに青い、これは馬の頭のようなかたちをしているでしょう。

お爺さんのカメラロールには、みたことない姿の星空がいっぱい。

星空を指差して教えてくれた。

あれは行者座、北極星、オリオンがあんなに下にある。

白鳥座、ベガ、アルビレオ。

満月期と新月期ってのがあって、いまは欠けていく新月期だから、空に月がなくって星が撮れる。

月の光はとっても強くて、月が出ているとほかの星がよくみえない。

満月なんかもうすごく強いね。

街の光はぎらぎらしていて、こんなふうに山の上まで登らなきゃあ星がよくみえない。

風があったら大気が揺れて、それも具合がよくないんだ。

今日は月もでなくて風もなくて晴れていて、いい条件なんだ。

星を撮るひとのこと、天文屋(てんもんや)って呼んでました。

太陽の黒点を追いかけているひと、星景写真っていって、星空と景色を一緒に撮るひと、星雲を追いかけているひと、惑星を追いかけているひと。

夜中に出かけて行って、宇宙に焦点をあわせてひたすら待っているのですって。

むかしの天文屋たちは、いまみたいに星の緯度を勝手に追いかけてくれる相棒がいなかったから、星のすがたを捉えるのに、ずうっとカメラをのぞいて緯度を調整しつづけてなきゃなんなくて、その場で星は見られなくて、フィルムの現像しないとわかんない写真を祈りながら撮っていたんだそうです。

だからいまは簡単に撮れるよ。って。

簡単に撮れるよってもうたぶん50回くらい聞いたよ。

わたしのもってるカメラでも、改造しちゃえば星の写真が撮れるんだって。

人間の目とおなじに、赤外線のフィルターがかかっているから、それをはずしちゃえばいいんだって。

ちょっとカメラが羨ましいんだ、そんなふうにわたしの目も、見たいなあと思った。

だけどそしたら潰れちゃうんだろうなあ。

取り外せて、取り付けられたらいいのになあ。

ああわたしも天文屋をやりたいなあ。

車の免許とろうとは思っていたのですが、もう俄然前向きな目標ができました。

わたしも車の中からでっかいバズーカみたいなやつを取り出して、夜中の一面の星空のもとで、見えないものを撮りたいなあ。

まるで自分で宇宙がつかまえられるみたいじゃないか。

京都にかえって、

夜になって、

空を見上げてもなにもみえなくって、

ああ寂しいなあと思って視線を下げたら

いつものように鴨川が街の明かりで光っていた。

もしかしたら、

見えないけど、

こっちのこの川のきらきらしたのとおんなじように、

空の向かいに星の川が流れていることもあるのかもしれないぞ、とおもいついて、

寂しいけれど、悪くないなと思いました。

まだわたしは捕まえられないけど、星空のなかにわたしもいるんだ。

星座が空にぎゅうぎゅうつまっていて、それぞれの物語があって、

昼間だって太陽が明るかって見えないだけで、

星も月も浮いている。 ひとがずっと宇宙に思うようにゆけなかったのは、

ふんわり浮いたりできないのは、

あんまりたくさんの物語がありすぎて頭がぱんぱんのぱあになっちゃうからかも。

すこしずつひとが賢くなって、

ロボットやAIが頭の代わりをしてくれて、

ひとが宇宙の物語を捉えられるようになっていって、

それだけに向き合えるようになったら、

みんな自由にゆけるのかしらね。

たましいだけになる、

ってもしかしたらそういうことなのかしら。



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