おやすみいただきまして
旅に出まして
ぶじに帰ってまいりました。
ありがとうございました。
いったことのないところにいって、
みたことないものたくさんみました。
いろんな音も聴きました。
海と、森と、山の、朝昼晩のようす
空が薄くて海が濃いとき
空が濃くて海が薄いとき
もこもこの雲と流れるだけの雲
おやまからのぼるけむ
霧かな雲かな
澄んだ水、渓谷
冷たいお水で顔を洗って手足をつけて
いつか溶けていくような感覚を覚えた
やまのじかん
いしのじかん
とんぼのじかん
ひとのじかん
わたしのじかん
いま、このたび
行ったことない土地のなか、
きっと土地の人たちばかりの祭りへ行った
いままでみたどんな大きな植物よりも大きな花火
地面が揺れて、音の衝撃を喰らった
木々の隙間からみえるひかりのつぶつぶ
燃えた火薬のつくる雲
こんなにきれいなそらをひとがつくれる
夜中の海を一人で眺めていた大きなとり
大雨の中、木の下で雨宿り
青いもみじを見上げたら
小さな葉っぱがたくさん嬉しくて踊っているみたいだった
大きなかえるが自分で掘った穴に落ち着くのをみた
信じらんないくらいの人だかりが、
体験したことないような広大な、
ひとの作った森の中にいた
あれだけ澄んだあの川が、濁流にかわった
大雨のなか、ずっとやまにいた
ずっと濡れてたの、ずっと
土砂降りのなか
海から渡ってきた音楽家のうたをきいた
踊り子まるごと、彼女の世界をつれてきてくれた
小さな傷が大きくなること
きっとその逆もあるだろうこと
それでもだいじょうぶだと
ちからになっていくことを、
うたいにきてくれた
ビニール越しにひたすらからだを打つ雨の感触
雨が冷やしたからだのうち、
手のひらだけがあたたかかったこと
太陽が水面につくる、幻のような、
だけど確かに触れられる道
ひぐらしと雨上がりの木々の
むせかえるような夏の匂い
海に入ってなんかの穴を触ってみたり
生まれて初めてなまこも触った
つやつやの大きなさかなが号令で飛んだら跳ねたり返したりするのをみた
目を瞑って、なみのおととむしのこえと木々のおどるおとをきいた
いったことないとこで、知らない人たちとお風呂に入った
トマトやプラムやきゅうりを朝食べた
気づいたら人の隣なのに眠っていた
漆塗りの重箱の底のようなくらい街を経て、
朝が少しずつやってきて、
世界の温度がもどってきた
このまま手を取り合って
きっとどこまででも行けるのだと思った
どこへいっても、どこでも、生きるだけだ
なんだか泣いちゃいそうな温度だった
旅というのは、きっといつでもはじめてなんですね。
出張にでて旅に出たつもりになっていたけど違ったんだ。
おとなになっていく。
ずっとしばらくかけて。
すごく、いい時間でした。
時間がどうも伸び縮みするみたいな気がしてるんですけど、だからあの夢みたいな三日間は新鮮なうちにきゅっとちぢめて、いつでも広げられるように宝箱の上の方に置いておきます。
わたしのほうせき。
うし。
社会性動物として一生懸命生きる時間にもどるです。
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