あそこにでたここにでた、
気をつけなよという話を聞き続けて一年が過ぎましたがついに生のクマを見ました。
まずは夫が見た。
夫は外でうろついているとき何か見せたいものがあると作業場の網戸のとこにそれを持ってやってくるのですが(私が常に作業場で仕事をしているため)、その時はちょうど席を外して台所で一服していました。
作業場は次男と三男の憩いの場でもあり、日中だいたいふたりともそこで寝そべっている。
なのに急に2人とも大急ぎで逃げてきた。
なんか落としたかどうかしたかと思って見にいくけどどうもなってない。
すると玄関が乱暴にがらりと開けられ、見ると爛々と瞳孔の開いた夫が興奮していた。
クマが出た!!
どうもでっかいクマを見たそうだ。
ついに。ついにクマだ。
私も一緒に興奮したいところだったがあまりにも夫が興奮して嬉しそうなのでよかったね〜とか言っていた。
クマに興奮した夫にびびってふたりは逃げたんだ。
どうぶつピタゴラスイッチ。
しかし次男坊はびびりのため瞳孔の開いた夫がかなり怖かったみたい。
三男はいつでも堂々としているのでけろりとしていた。
次男はうちに来たばかりの、ぶるぶる震える仔猫だったころ、カーペットとホットカーペットの隙間に入って丸くなって怯えていた時期があった。
今回興奮した夫にびびった次男は仔猫の頃のようにカーペットの隙間に入ってしまった。
さすがに震えてはいなかったけれど大好物の干しカニカマをあげても食べないくらい怯えていた。
夫を叱って彼の心のケアをしなさいと言った。
夫はバツが悪い時はだいたい黙っている。
しばらくして怯えも取れた次男を抱っこして見せつけるように夫がやってきた。
また甘えるようになったのでよかった。
しかしでかいクマの写真を撮れなかった夫はいつのまにかまた外に出てクマを探していたようで、ふとさっきとは大違いの厳格な声で呼ばれた。
クマがいるぞ。
声を出さずできるだけ静かに誘われるまま前の畑にむかう。
畑のそばは川が流れている。
畑の端っこから急斜面になって、川は渓谷といったかんじ。
その谷から生えているでっかい木のうえに、子グマがいた。
畑から見ても見上げるほど高い木の上でがさがさ葉っぱを揺らしている。
我々に気づいたらしい子グマはこっちに顔を向けながらポールを伝って滑り降りる消防隊のように、しかし変わらずがさがさ言わせながらまっすぐ木を降りた。
マンガの一コマのような情景だった。
そして間をおかずどぼん!という音と水しぶき。
子グマは急いで木から降りてそのまま川に転がり落ちたようだ。
ばしゃばしゃと対岸に行く様子。
写真も撮れて再度興奮した夫が川に降りようとするので止めるが聞きそうになく、やむなく念の為手にしていたでかめの石を投げたら立派な木の枝に当たってその音で我に返ってくれてすぐ退散した。
握りしめていたでかめの石は対クマ対策のつもりだったが夫対策に役立った。
子グマのそばには親グマがいるから余計に気をつけなきゃいけないっていうのはここ一年で50000回くらい聞いたことだ。
そりゃ子を守る親ほど怖いものは動物界にはいないだろう。
畑のかぼちゃやズッキーニに謎の爪痕とかじりあとがあって、それはアナグマかタヌキだろうと思っていたけどここまで畑の近くにクマがくるならクマの可能性もある。
子グマがあのちいちゃいかぼちゃをかじっていたのだろうか。
野菜たちは中途半端にかじっては放り出してあるのでこん畜生めと(動物だけに)苦々しく思っていたが子グマや子アナグマの可能性もあるのだ。
子供ならしょうがない。
恐ろしい獰猛さのある野生動物だ。
気をつけなきゃならない。
それは重々承知の上で、でもびっくり顔でこっちを見ながら木の幹を両手で掴んで滑り落ちていった子グマの姿はあんまり可笑しくて、目に焼きついてしまった。
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