都会の出稼ぎからもどってきてしばらく。
1ヶ月も経ったように感じるけれどまだたったの一週間だ。
こちらの時間はとてもゆっくりだ。
時間がゆっくりしている、とはよく聞く言い回しだけれどほんとうに体感すると不思議な感じ。
めいっぱいの仕事をこなしても、雪かきをしたり薪を運んだり猫を撫でたり昼食後にひとやすみしたり夕食をゆっくり食べて酔っぱらう時間がある。
京都にいたころはめいっぱいの仕事をするためには深夜まで起きるか陽がのぼっていないうちから始めるかしかなかった。
夕食をゆっくり食べるというのは贅沢な時間の使い方だった。
灰色の時間泥棒に盗まれた時間が返ってきたのか。
いやこれは、きっとくじらの時間である。
大きないきものは大きい時間を泳ぐために脈拍がゆっくりだという。
きっとそういうやつである。
こちらには心拍を早める心配も焦りもなにもないので、だからきっと時間がゆっくりなんだ。
ここ2日ほど夫が流行り病にて寝込んでいる。
普段は多少の体調不良があっても山に飛び出していくような動物じみたところがあるので、一日中布団の中で寝ているというのは相当珍しい事態だ。
かなり辛いのだろうと思うが体調を尋ねてもむっつり黙るので実際のところはよくわからない。
そういうことで、ここ2日は広いこの家にひとりで暮らしているようなかんじ。
いままでこの家ではふたりの都合で暮らしがまわっていたのでかなりひとりのかんじがある。
そいで時間の経ちかたのことがふと不思議になったんである。
いままで夫が家のことをしてくれているからこそこんなにめいっぱい仕事ができているのやと思っていたけれど、思っていたより時間の流れは変わらなかった。
だから、この大きなうちは大きな海で、うちにいるとみんな大きなくじらになるのかもしれない。
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