あまえんぼたち
- すずめや
- 6月14日
- 読了時間: 4分
猫の抜け毛の季節が到来した。
もうとってもとってもとっても無限に出てくる毛地獄。
しかしそれはいつもよりも格段にスキンシップが多くなるということで、みんなブラシが好きなのであまえんぼが加速する。
だいたい昼過ぎまで猫たちは各々のよい場所で寝ているが、おやつどきくらいになるとなんとなく動き出して私のいる場所に集合してくる。
それはだいたいいつもアトリエ。
小高い棚の上、いちばん良い椅子の上(もう諦めて猫用クッションが置いてある、わたしはニトリの折りたたみ椅子で作業している)、広げっぱなしにしてた撮影用のシートの上、もう電源が入ってないちっちゃなホットカーペット、窓のそば。
4匹いる猫のうち、自室引きこもり猫のモンティーヌをのぞいた全員が集合する。
いちばんのあまえんぼのめーめはだいたい私に一番近い椅子の上にいて、いちばん若いヤン子は膝のうえか棚の上、そしてびびりでマイペースのみんみは、ブラシをかけるようになってからぐっとあまえんぼになった。
なんとなく手の届くところにいたり、膝が空いていたら乗ってくるし、ブラシのない時期は抱き上げようとしてもかなり俊敏に逃げる場合が多いのにいまはあまえんぼだ。
いちばん人気の場所はわたしのそばに置いてある良い椅子の上で、うまくやると二匹乗ることができる。
居心地が良いらしくみんなそこでは眠りたいみたいで、そうなると譲り合って二匹でいても、そのうち眠さに負けて体勢を変えたくなるし苛立ちも起きるらしく軽い小競り合いが勃発し最終的にだれか一匹のものになる。
それはだいたい我のつよいめーめだ。
ヤン子はみんなよりちっちゃいので、二匹めにはヤン子がおさまっていることが多い。
日が傾き始めるとみんなそわそわしてごはんを催促しはじめる。
めーめとみんみは作業台にかわるがわる乗ってくる。
みんみのごはんねだりはあざといくらいのすり寄りぶりだが、めーめはなんかどしっとしている。
ただ眼前にすわり、作業中とかぜんぜん無視して目の前にでんといる。なぜか目を合わせない。
ヤン子は目を細めて棚の上にいる。
モンティーヌは遠くでしつこく鳴く。
ごはんねだりがはじまっても時間がくるまでごはんをあげてはならない。
はやく晩ごはんにすると朝のごはんねだりがはやくなる。
朝の3時半に叩き起こされるのはさすがにつらい。
みんみは朝、おなかがすくとあたまをごっつんごっつんしながらしつこく鳴く。
モンティーヌもしつこく鳴くのが得意技である。
にゃんにゃか二重奏に加えて物理攻撃まであるのだからこれは叩き起こされると言っても大げさにはなるまい。
朝も夜もしばらくのあいだあまえんぼ攻撃に耐えねばならない。
ごはんのときはもうみんなにゃあにゃあ言ってこっちを爛々とみつめ、じぶんたちのごはん皿に走ってゆくのが可愛い。
特にヤン子は仔猫の頃から使っているじぶんの青いお皿のことをわかっていて、誰かのごはん皿にカリカリがのせられてもじぶんのお皿にカリカリがのるまで待ってから食べるかしこいところが可愛い。
あんなに待ち望んでいたごはんもとりあえず食べたらなんかちょろっと残して満足するみたい。
あとはちまちま小腹が減ったときに食べる方式だ。
といってもみんな残すのはおおさじ一くらいの分量なのでそれも可愛い。
おおさじ一を、ちょこちょこつまむように食べる。
通りすがりにちょっと食べる。
暗い廊下にささやかに響く猫のカリカリの音。
このちょっと残しを、いっとき犬のぬげたが盗み食いしていた。
ぬげたは異常な食いしんぼうなので、ご飯を食べたお皿をきれいに舐める。
あろうことかヤン子の青いお皿のごはんを盗み食いしたのちべろべろ舐めているところをわたしに見つかり叱られた。
それは何度か繰り返された。
ぬげたは異常食欲をもつ(それはおそらく彼の過去に関係しているが保護犬なので詳しいことはわからない)が、それでもやっぱり犬なので、叱られたことがちゃんとわかってもう猫のごはんは食べなくなった。
猫のちょっと残しがちゃんとちょっと残しになっているのはぬげたが誘惑に負けずにいることの証明でもあるのだ。

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